猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・田口壮二軍監督の奮闘。
「負け慣れた」チームを変える為に。
posted2016/04/30 15:10
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
紺色のストッキングが膝下まで見えるオールドスタイル。現役選手のように若々しく着こなしたユニフォーム姿で、すれ違う人と気さくに挨拶を交わしながら、軽やかに自転車をこぐ。
「寮と球場の往復には便利なんですよ」
そう言って笑うのは、オリックスの田口壮二軍監督だ。自身も現役時代を過ごした青濤館の室内練習場と、二軍の本拠地である神戸サブ球場の間の微妙な距離を、愛用の自転車で行き来する。
田口監督は、関西学院大学から1991年のドラフト1位でオリックスに入団。同期のドラフト4位にはイチローがいた。
入団3年目の'94年にレギュラーを獲得。'95年にリーグ優勝を果たし、翌年には日本一に輝いた。'95年からは3年連続でゴールデングラブ賞も獲得した。
そして2002年、海を渡る。マイナーを経験しながらもメジャーにはい上がり、'06年はカージナルス、'08年にはフィリーズで、2度ワールドチャンピオンに輝いた。
'10年に古巣オリックスに復帰し、'12年に現役を引退。解説者を務めたのち、昨年10月、オリックスの二軍監督に就任した。
二軍監督という立場独特の難しさ。
初の指導者、しかも二軍監督という仕事に、今、面白さと難しさの両方を感じている。
「若い選手たちと、それぞれの目標に向かって一緒にやれるという楽しさがある。ただ、彼らにとってはゴールが見えないから、その中でどうやってモチベーションを高く保つか、マンネリ化しないためにはどうすればいいのかというのはすごく考えます。いい成績を残したから(一軍に)上がれるかと言ったら、そうではないですから」
二軍の選手たちにとっては、一軍に昇格することがここでの一つのゴールなのだが、そのための条件が明確にあるわけではない。数字や目に見える結果を残しても、一軍の状況次第で、呼ばれることもあれば呼ばれないこともあるのが現実だ。