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MotoGPはルール変更で混戦の予感。
ただ1人ロレンソが好調な理由は?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/02/14 10:30
ワークス勢の中でただひとりベストタイムを更新したロレンソ。連覇へ向け、視界良好だ。
制御に苦労したのはパワーのあるV4勢。
特にエンジンパワーに定評があるホンダとドゥカティのV4勢が苦戦していた。これまでは、まずエンジン出力を上げて、それを電子制御でコントロールしていくというやり方だった。それが共通ソフトウエアになり、これまでのようにかゆいところに手が届くセットアップが出来なくなったのだろう。昨年から共通ソフトウエアのテストは始まっていたし、それに合わせて対策をしてきたのだろうが、それでも十分ではなかったようだ。
これまでは、アクセルを開けると姿勢の乱れもなくきれいに立ち上がっていた。スライドさせたいところでタイヤをスライドさせ、させたくないところではきちっとグリップするようにセッティングすることが出来た。それが共通ソフトでは、スライドしてからそれを関知してスライドを止めるという状態。さらに、加速にもっとも影響のあるリヤタイヤのスピニングでは、空転してからそれを止めるという、かなり大ざっぱな制御になっていた。
技術的後退は3~5年に相当。
どのくらい技術的に後退したかという問いかけに、あるライダーは5年といい、あるライダーは3年と答えた。つまり、これまで使っていたソフトウエアとの比較になってしまうが、ファクトリーチームのライダーにとっては、一足先に共通ソフトウエアを使っていたプライベートチームがいかに厳しい環境で戦っていたかを、改めて感じることになっていたのではないだろうか。
そういった遅れている部分を改善するために、メーカー同士が話し合って共同開発していくということになっているが、方法に関して問題は山積している。これまで培ってきた技術やノウハウを投入するのは難しいことではないが、ソフトウエアをアップデートするために、メーカーはこれまで安全性のテストを徹底的に行ってきた。これが全車共通のソフトウエアとなれば、その安全テストをどうやっていくのか。さらに、各メーカーが持っている特許の問題もあり、どこまで協力していけるかという課題も残る。現実的にアップデートは、そう簡単なことではないようだ。