スポーツのお値段BACK NUMBER
大学アメフト指導者が年収8億円超!?
プロ野球より大きい米アマ競技の世界。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2016/02/07 10:30
アメリカのトップ大学がスポーツで稼ぎ出す額は、ほとんどのNBAチームやNHLのチームを上回るほどだ。
日本のアマチュア界にも強力なコンテンツはある。
話をアラバマ大学に戻しましょう。
収入は前述のとおりですが、支出を見てみると「コーチ・スタッフ(人件費)」約54億円(!)、「奨学金」約16億円、「施設・グラウンド」(約43億円)といった内訳になっています。それでもなお40億円の黒字というわけですから、ヘッドコーチに数億円という高額な報酬を支払えるのもうなずけます。
つまりアマチュアスポーツといえども、確固としたビジネスモデルを構築し、そこで得た収益を、優れた指導者の確保・選手の獲得・環境整備に惜しげなく投資しているのです。その結果、競技レベルが向上し、スポーツ界全体の発展につながっていると考えられます。
翻って、日本のアマチュアスポーツ界の現状はどうでしょうか。億単位の年収に思わずため息がこぼれてしまう――そんな光景が現実を如実に物語っているような気がします。
恵まれた環境を用意されたチームがある一方で、たとえ有名校であっても、古びた施設を使い続けざるを得ないチームも決して少なくないはずです。
日本のアマチュアスポーツにも、強力なコンテンツは存在します。全試合が生中継される甲子園を筆頭に、箱根駅伝や東京六大学野球、あるいは大学ラグビーなどには根強いファンがいて、ひとたびスター選手が登場すれば国民的な関心を集める大きなトピックになるポテンシャルを秘めています。
しかし日本では、アマチュアスポーツにビジネスの視点を持ち込むことは、タブー視されているとまでは言わずとも、慎重になるべきとの声が大きいように感じます。
選手がより高いレベルの指導を受けるために。
ただ、今回のコラムで紹介してきたようなアメリカの事例を知れば知るほど、日本も学ぶべきところがあるのではないかと思わずにはいられません。
競争原理を働かせることで、放映権をはじめとした様々な権利をもっと大きなビジネスにつなげることは考えられないか。アメリカでは強豪校のユニフォームが全国のスポーツ用品店で販売され、子どもから大人までそれらを着てチームを応援している状況を踏まえて、日本でも商品化の知恵を絞り、子どもたちが気軽に買えて選手やチームへの憧れを抱けるようなユニフォームやグッズを開発できないか。そして、収益と支出を透明化し、指導者が報われ、選手がよりよいパフォーマンスを発揮できる環境を整えることはできないか。
日本のスポーツ界全体の発展のために、こうした議論を重ねていくことは重要な意味を持つのではないかと思います。より多くのアマチュアアスリートが、高いレベルの指導を受けられるように。それを支える事業面の発展が進むように。そして彼らの姿を見て歓喜する人がまた増えていくように。そんなきっかけを作っていければと感じました。
(構成:日比野恭三)