野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭と智弁学園の“好循環”。
OBプロ選手が母校で練習する意味。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/01/20 10:30
プロでもスラッガーとして頭角を現しつつある森友哉。その存在が後進に与える影響ははかりしれない。
智弁学園でも、プロと高校生の化学反応が。
そして奈良県五條市にある智弁学園にも、似たような循環が生まれようとしている。
昨秋、智弁学園から現役選手とOB選手が一人ずつドラフトされた。
ヤクルト2位指名の廣岡大志とオリックス4位指名の青山大紀である。
昨年末に智弁学園を取材に行った際には、台湾のウインターリーグで好成績を出したばかりの岡本和真(巨人)もいた。3人が智弁学園のグラウンドにいたのだ。年齢で見ると、青山が21歳で、その2学年下の岡本が19歳、その1学年下の廣岡が18歳といった具合だ。
彼ら3人も互いに刺激を受けただろうが、同じ環境から巣立った選手たちの存在は、在校生たちにも大きな刺激になったことだろう。指導する立場にしても、原石をしっかり磨くことができていると手ごたえを感じるはずだ。
さらに、今年の智弁学園の1年生には、将来が嘱望される太田英毅という選手がいる。小坂監督にいわせれば、「(ヤクルトに入った)廣岡より、持っているものは上。廣岡ほど体は大きくないですけど、センスがありますよ」とのことだ。
1年生にして智弁学園のショートストップ。昨秋は1番を務め、近畿大会の1回戦・神港学園戦では先頭打者本塁打を放ち、チームに勢いをつけた。今春センバツへの出場の可能性が高いだけに、その打棒に注目である。
環境が人を育てる、そのために――。
そんな太田にとって、岡本や廣岡の存在はどのように映っているのだろうか。
「岡本さんは僕が入学前だったんですけど、そういう方々が身近にいるのは刺激になっています。選手として目標としているのは廣岡さんです。半年しか一緒にプレーしてはいませんけど、廣岡さんのプレーを見ながら、盗めるところがないかずっと探していました。ただ、憧れてしまうと超えることはできないので、廣岡さんを追い抜けるようにと思っています。上でプロに行けるように、しっかり練習していきたいです」
太田は、希望ある未来を意識しながら、これから2年半の高校生活を送る。オフが来るたびにOBの選手を間近に感じる機会があれば、自身の現在地を確認することもできるだろう。それが彼にとって、成長の材料になるはずだ。
高校生にとって、プロに触れ合う機会はやはり成長のきっかけになる。プロ・アマ関係は雪解けが進んでいるといわれるが、その変革スピードは恐ろしく遅い。
あれだけ不調に陥っていた選手をプロの存在が大きく変化させたことに、環境が人を育てることを再認識したものだった。