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U-23が満たす「強いチームの条件」。
発言が似てきた手倉森監督と遠藤航。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/19 11:30
特別な武器よりも、オールマイティであることを目指す遠藤航。その中には、当然タフネスも含まれているのだろう。
「ワタルをまずここで、ひと叩きしたかった」
遠藤がチームの練習に合流したのは、北朝鮮戦を4日後に控えた1月9日だった。コンディションは回復過程であり、ひとまず無理をさせない選択肢はあったはずだ。ダブルボランチの一角を担うキャプテンがゲームで機能しなければ、劣勢に立たされるリスクを背負ってしまう。遠藤のパフォーマンスが低調な状態で勝点を逃せば、「なぜ使ったのか」との批判が沸き上がっただろう。「余力を残しながら準々決勝に臨みたい」という指揮官の構想が、いきなり瓦解してしまうことにもなる。
だが、手倉森監督は初戦から遠藤を起用した。大島僚太と原川力のダブルボランチも考えたというが、最終的にはキャプテンを送り出している。
「ワタルをまずここで、ひと叩きしたかった」
北朝鮮戦後、手倉森監督は独特の言い回しで起用の理由を説明した。1月3日のカタール入り後に行われた練習試合に、ホテルで静養していた遠藤は出場できていない。グループステージの初戦で試合勘を呼び覚ますことで、チームの「心臓」にして「肺」でもあり、さらに言えば精神的支柱でもあるキャプテンを、戦闘モードへシフトさせたかったのである。
チームを「割り切らせる」という難しい仕事。
「パス交換をする距離がユニットごとに遠くて、ワタルも珍しくボールを失うことがあった。ただ、守備面ではボランチのところでかなり相手の攻撃を弾いてくれた。それから、チーム全体を精神的に(守備へ)割り切らせた部分はね、キャプテンを初戦に使って良かったなと思いますよ」
手倉森監督が遠藤へ寄せる信頼は、揺るぎないものがある。
振り返れば昨年3月の1次予選でも、手倉森監督は遠藤を3試合連続でスタメン起用している。中1日の過密スケジュールのなかで、フィールドプレーヤーでは彼だけをターンオーバーの例外とした。