サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
3連勝のU-23にあえて警鐘を鳴らす。
「先制された時」の戦い方を準備せよ。
posted2016/01/20 11:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Takuya Sugiyama
リオ五輪出場を懸けたAFC U-23選手権、日本はグループリーグ最終戦でサウジアラビアに2-1で勝利した。前の試合ですでに首位通過を決めていたが、これでグループリーグ3連勝となり、3試合で7得点1失点。文句のつけようがない完璧なグループリーグ突破となった。
サウジアラビア戦では初失点こそしたものの、井手口陽介がゴールを決めるなど大会初出場の選手が活躍。主力とサブの間に垣根がなくなり、チーム力は着実にアップしている。さらに言えば、タイ戦の鈴木武蔵に続いて、サウジアラビア戦でも大島僚太がスーパーゴールで先制点を決めるなど、リオデジャネイロ五輪に向けて見えない風が吹いているような感じさえ受ける。
選手たちも口を揃えて、「チームは最高にいい雰囲気です」と語っている。3連勝で波に乗り、一見決勝トーナメントに向けて死角はないように見える。
先制されると勝てない、という悪癖。
「1試合ごと戦って成長し、総合力を高めていく」
それが、手倉森誠監督の最終予選の戦い方のポイントである。
絶対的な選手がいない中、試合に勝つことで選手の経験値と自信を高め、力を上げていく。その通りに、ことは進行してきた。グループリーグ3試合でフィールドプレイヤーすべての選手を起用し、最終予選の“場”の空気に慣れさせた。「勝ち急がないで戦うことができている」と手倉森監督はチームへの手応えを述べたが、確かにタイ戦でもサウジ戦でも、大幅にメンバーが変更される中、慌てることなく冷静に戦うことができている。そこには、確かにチームの成長を感じることができる。
それでも、チームから圧倒的な強さを感じるかと言えばそうではなく、むしろ不安が胸に募るのは、なぜだろうか。
おそらくそれは、このチームの「本当の力」がまだ見えないからだと思う。本当の力とは言い換えれば「逆境を跳ね返す力」である。
現チームは、相手に先制された試合で勝てていないという事実がある。最終予選前、遠藤航もそのことをずいぶん気にしていた。