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“逆転イッパツマン”北川コーチが
オリ打線に教える「二段構え打法」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/11/30 10:30
今年6月、交流戦で阪神和田監督に挨拶する、プロジェクトマネージャー時代の北川氏。この経験がコーチ業にどう活きるのか。
野村克也監督に授かった二段構えの教え。
「『あれ来たらどうしよう? コレ来たらどうしよう?』じゃあ打てない。『ま、コレ来て空振りしたらしゃーないわ』というぐらいの割り切りというか、覚悟。そういうものを持たないと、結果なんてついてこない。だから、いかに自分で割り切って、思い切ったプレーができるかというのを考えさせてあげたいと思うんです」
北川自身も現役時代、「空振りしたらどうしよう?」「ゲッツーになったらどうしよう?」と考えて結果が出ない時期があった。転機となったのは、阪神在籍時に野村克也監督(当時)から受けた「二段構え」の教えだった。
「野村さんに教わったことで一番頭に残っている言葉ですね。割り切ると言っても、まっすぐだけだったら、結局なんでも振っちゃうような感じになるので、『外のまっすぐ』とか『高めの変化球』とか、そういう二段構えを常に意識するようにしたことは、僕にとってすごくプラスになりました。今年のチームを見ていると、チャンスで消極的になっているように見えたし、逆に、積極性を持って初球から打とうとしているけど、ボール球を振ったりしていた。『初球は何でも打つ』じゃなく『ファーストストライクを打つ』じゃないと。そういう絞り方を伝えていきたいですね」
人生を変える一打を打たせたい。
近鉄の12年ぶりの優勝を決めたあの打席にも、北川は二段構えの考えで臨んでいた。
「あの時は『高めのまっすぐ』というのを一番頭に入れていました。追い込まれたら変化球、というのもちょっと頭にはありましたけど。あの時のピッチャーは(オリックスの)大久保(勝信)だったので、フォークがいい。だから低めを振っちゃダメなので、高めのボールを意識して、それプラス、後悔したくなかったので、基本まっすぐでいこうと思って。結果的に、(追い込まれてから)打ったのはスライダーでしたけどね(笑)」
北川は、2012年の引退会見で、「僕はホームランで人生が変わった」と語っていた。
教え子にも、そんな“人生を変える一打”を打たせるために。時には厳しく、時には温かい笑顔で、後輩たちを導いていく。