濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ヒョードル、把瑠都、高阪、桜庭……。
新イベント「RIZIN」はどこへ行く?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2015/11/15 10:40
左からヒクソン・グレイシー、(パネルの)クロン・グレイシー、山本アーセン、山本郁榮。
“テレビ格闘技”が訴えかける“最強幻想”。
「ボクシングの世界チャンピオンと柔道の金メダリストが闘ったらどっちが勝つのか」、「相撲の横綱って、やっぱり強いんじゃないか」。そういう興味は、スポーツとして考えればバカバカしいことかもしれないが、決して消えることがないはずだ。
UFCにおけるMMAは“さまざまな競技の技術が使用可能な、一つのスポーツ”。一方でRIZINは他流試合、異種格闘技戦としてのMMAをやろうとしているのではないか。
話題性があれば、そして「この選手はMMAでも強いんじゃないか」という幻想があれば、デビュー戦かどうかは関係ないのがRIZIN式、日本独自のMMA。他流試合として考えれば、別競技でのキャリアがそのまま“実績”にもなる。
そんな日本だからこそ、吉田秀彦が国立競技場プロデビューしたのではなかったか。PRIDEのスタート地点である高田延彦vs.ヒクソン・グレイシーにしても“プロレス最強幻想”があったからこそ成立したものだ。「バーリ・トゥードの専門家にプロレスラーが勝てるわけがない」と考えたら、そもそもPRIDEはなかった。
「なんだこのマッチメイクは」というざわつきも含めてのビッグイベントであり“テレビ格闘技”だ。実を言えば、筆者にも「それだけが格闘技だと思ってほしくない」という気持ちはある。ただ、「それも格闘技」ではあるのだ。
未来のスター候補生はインパクトを残せるか。
RIZINの成功の鍵は、スポーツとしての正しさではないだろう。
といって“PRIDE復活”ですぐに観客と視聴者が戻ってくるわけでもないはずだ。
PRIDEの活動休止は2007年。ヒョードルですら、一般の視聴者には「昔の名前」でしかない可能性もある。
RIZINに必要不可欠なのは、新しいスターを生み出すことができるかどうかだ。その意味で、RENAには女子格闘技の新鮮さも含め、大きな可能性がある。新たに出場が決まったヒクソン・グレイシーの息子クロンは、過去と現在、そして未来をつなぐ存在になりうるはず。そのクロンと対戦するのは、山本美憂の息子で山本“KID”徳郁の甥・山本アーセン。レスリングで実績を持つ彼が“大型新人”であることは間違いない。DEEP王者・元谷友貴など現在進行形の強豪も参戦する。
こうしたスター候補を集めたことからも、主催者の「同窓会では終わらせない」という意図が伝わってくる。RENAやクロン、アーセン、元谷がイベントの主役になった時が、RIZINの真のスタートだ。