ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
世界選抜で“控え”に回された1日。
松山英樹がコース外で気づいたこと。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa/GDO
posted2015/10/14 10:30
控えに回った2日目、松山英樹は真剣な表情でジェイソン・デイらのプレーに視線を送っていた。
“控え”に回された2日目。
だからこそ2日目に、出場機会がない4人のうちのひとりに入ったことは驚きと言えた。
確かに初日にスコットとのコンビで挑んだフォアサム(2人が1つのボールを交互に打ち、相手のペアとホール毎のスコアを競うダブルスマッチプレー)で敗れたが、翌日は個人の力を発揮しやすいフォアボールラウンド。同じチームから2人ずつ、1組4人がそれぞれのボールをプレーし、ホール毎のスコアで争う方式は普段のストロークプレーに近い。
プライスは「3日目に2試合、36ホールをプレーしてもらう」とオフとした理由を告げたと言うが、本人の胸には悔しさが募ったはずだ。2日目の朝、出場する選手たちがスタートした後、松山は人もまばらなドライビングレンジで、そっと調整を終えた。
他の選手を客観的に観るのはいつ以来だったか。
しかし午後になってロープ内で他選手の応援に回った松山は、次第にゲームにのめり込んでいった。途中からは自分の通訳を置き去りにして、自らの足で練り歩き、両チームのプレーに目を凝らした。普段同じ舞台で戦っている彼らが、激しく一喜一憂する姿を間近で客観的に観たのは、いつ以来のことだっただろうか。
そして思った。
「ここにいる連中はハンパじゃない」
だがこうも思えた。
「そういう連中でもミスはあるんだなと思った。いつも、いつも良いわけではないんだ」
マッチプレーは極度の緊張感からスーパープレーも生まれるが、一方では目を覆いたくなるようなみすぼらしい失敗もある。たとえ自分が完璧な状態でなくとも、勝利が転がり込んでくることもある。
松山が感じたもの。それをより鮮明に体現したのは、翌日ベ・サンムンとの抜群のコンビでチームに貢献した3日目よりも、一対一で戦う最終日のシングルマッチプレーだっただろう。