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プレミアで続出する“大型誤審”。
審判保護のためにも、ビデオ判定を。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byTomoki Momozono

posted2015/03/06 16:30

プレミアで続出する“大型誤審”。審判保護のためにも、ビデオ判定を。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

テクノロジーが発展した現在でも、審判は自らの目だけを頼りに判定を下している。この状況は、いつまで説得力を持ち続けることができるだろうか。

危険行為の「裁き漏れ」が絶えないプレミア。

 同様の事例は、1月にも見られた。マイナーな対戦カードだったことから大騒ぎにはならなかったが、大怪我をしかねないタックルを受けたスウォンジーのウェイン・ラウトリッジが、思わず相手に突っ掛かっていってレッドをもらっている。

 一方で、タックルを仕掛けたQPRのカール・ヘンリーはイエローしかもらっていない。微妙なオフサイドやハンドの判定はまだしも、英語で「レッグ・ブレーカー」と呼ばれる危険なタックルは漏れなく戒められるべきだ。

 ところがプレミアの現状はというと、危険行為の「裁き漏れ」が後を絶たない。3月に入っても、1日にストークがハルを下した(1-0)一戦でストークのスティーブン・アイルランドが12針の裂傷を脹脛に負ったが、背後からスパイクのポイント剥き出しで削ったマイノル・フィゲロアには警告もなかった。試合後、勝利監督のマーク・ヒューズに笑顔がなかったのも当然だ。

審判団はプロであり、推定年俸は1200万円。

 ヒューズが「プロのくせに、無害なタックルと選手生命を脅かすタックルの区別もつかない」と憤慨していたように、国内プロリーグの審判団は、2001年からプロ審判協会(PGMOL)の管轄下に置かれている。中でもプレミアで笛を吹く審判は、セレクト・グループと呼ばれるエリート集団の一員。推定年俸65000ポンド(約1200万円)という「高給審判」だ。

 PGMOLの現責任者であるマイク・ライリーは、今年に入ってからデータを片手に「部下」の弁護を試みている。

 曰く、試合結果を左右する重大判定の精度は、5年前の94.1%から95%に上昇しているという。だがピッチ上で誤審が目立つ現状では、この僅かな上昇率などあってないようなものだ。巷には、「審判長」のライリーに辞任を求める声もある。ライリーには、必要以上に警告の多い審判という現役当時のイメージが不利に働いているようにも思えるが、PGMOLが頻繁に行なっているはずのレビューやアドバイスが成果を挙げていると思えないことは事実だ。

 後任に推されているのは、昨季までプレミア審判会の第一人者として試合を裁き、昨夏のW杯でも笛を吹いたハワード・ウェブ。引退後はライリーの下でテクニカル・ディレクターを務めているが、まだ40代前半ということもあり、現役復帰を求める声も少なくない。

 他にも後任候補にはPGMOLの元責任者で、現在はyou-are-the-ref.comでブログを綴るキース・ハケットも含まれる。

【次ページ】 ビデオ判定を重大判定だけでも導入してみては……。

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