プレミアリーグの時間BACK NUMBER

プレミアで続出する“大型誤審”。
審判保護のためにも、ビデオ判定を。 

text by

山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2015/03/06 16:30

プレミアで続出する“大型誤審”。審判保護のためにも、ビデオ判定を。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

テクノロジーが発展した現在でも、審判は自らの目だけを頼りに判定を下している。この状況は、いつまで説得力を持ち続けることができるだろうか。

ビデオ判定を重大判定だけでも導入してみては……。

 だが、PGMOLの体制変更よりも効果的な対応策はビデオ判定の導入だろう。2年前にゴール判定システムが導入された時点では、機械的な処理はゴールライン上の判定に留めておく方が良いように感じたが、今季のプレミアを眺めていると、PKや退場のような重大な判定に的を絞れば、システム導入対象の拡大も悪くはないと思えてくる。

 オランダで検証されている、第5審判がモニターでライブ映像を確認しながら主審をサポートするシステムは、15秒以内に判定が可能だという。通常、判定に抗議する選手たちを審判がなだめるのに要する時間を考えれば十分に許容範囲だ。

 細かなファウルまで逐一分析して判定するわけではないのだから、試合が寸断される心配もない。報道によれば、第5審判の助けが必要とされる重大判定の頻度は1試合に3回程度。最終的な決定権を主審に委ねれば、審判の権威が犯されることにもならない。考えてみれば、テレビ観戦者はもちろん、試合会場にいるチーム関係者、報道陣、そして観衆も、その気になればモニターや携帯で映像を確認できるご時世に、判断を下すべき審判だけが肉眼頼りという状況は理不尽とさえ思える。

 もちろん、否定的な意見はある。誤審で被害を受けたはずの監督の中にも、導入反対者はいる。

 3月1日のマンチェスター・ユナイテッド戦で、ウェズ・ブラウンが無実の罪で退場を命じられたサンダーランドのガス・ポジェだ。相手FWのラダメル・ファルカオに両手をかけていたのは、ブラウンではなくCBコンビの相棒ジョン・オシェイだった。

 しかもPGMOLの公式説明によれば、当日のロジャー・イースト主審は選手を見誤ったのではなく、得点機を妨害したファウルはブラウンにあったと判断しての退場処分というのだから、明らかな誤審だ。

 にもかかわらずポジェは、判定には呆れながらも「何もかも機械的に判断されたのではつまらない。議論の余地がある曖昧さもサッカーの魅力だ」と語っている。イングランドでは、ピッチ上での出来事を巡る国民の喧々囂々が当たり前。ポジェの発言には一理ある。

 同時に、判定ミスの被害が最小限だったことからくる心の余裕が言わせた発言と思えなくもない。ブラウンへのレッドはFAの裁定で取り消され、主審の誤認ではなかったと発表されていることから、オシェイへの処分移行もなかったのだ。

「万人に裁かれる」状態からの解放にもつながる。

 この一件は、奇しくも北アイルランドで行なわれた会合で、IFAB(国際サッカー評議会)がビデオ判定導入のトライアルを「時期尚早」と判断した矢先の出来事だった。判定による泣き笑いが続く監督連中は、IFABの腰の重さにがっかりしていることだろう。そして、密かにPGMOLの面々も。

 ともすれば審判が「システムに裁かれる」と受け取られがちなビデオ判定だが、実際には、ライリー率いるプレミア審判員たちを、ビデオ確認が可能な「万人に裁かれる」境遇から解放する手段になるはずなのだから。

関連記事

BACK 1 2 3

海外サッカーの前後の記事

ページトップ