スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ストーヴリーグと新勢力図。
~大物選手の移籍とイチローの去就~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2015/01/10 10:50
ヤンキースをフリーエージェントとなったイチロー。移籍先にマーリンズやオリオールズの名前が浮上してはいるが……。
頻繁に起こったトレードと、イチローの行方。
ただしこの地区は、今季最もスリリングな激戦区だ。タイガース、ロイヤルズ、インディアンスといった強敵に伍して、ホワイトソックスはどこまで戦えるだろうか。ロイヤルズのGMデイトン・ムーアは相変わらずの策士ぶりを発揮しているし、目立った補強の最も少なかったインディアンスが、安定した投手力で混戦を抜け出す可能性もないとはいえない。
シカゴの両チーム以外にも、興味深い補強に成功した球団はいくつかある。ジャスティン・アプトン(4対2のトレード。対ブレーヴス)やマット・ケンプ(3対2のトレード。対ドジャース)を獲って攻撃力を高めたパドレス。マット・レイトス(2対1のトレード。対レッズ)やディー・ゴードン(4対3のトレード。対ドジャース)を獲得して足と守りを重視しようとしているマーリンズ(イチローにも食指を伸ばすかもしれない)。さらには、ラッセル・マーティン(8200万ドル/5年)をFA市場で獲り、ジョシュ・ドナルドソンを4対1のトレード(対アスレティックス)で獲得して破壊力を増したブルージェイズ。少なくともこの3球団は、ストーヴリーグで注目すべき戦果を挙げたといってよいのではないか。
なかでも、伏兵になる可能性があるのはブルージェイズだ。なるほど、このチームには先発投手の高齢化という弱点がある。R.A.ディッキーやマーク・バーリーは四捨五入すると40歳だし、それにつづくJ.A.ハップやドゥルー・ハッチソンにはいまひとつ信頼がおけない。ブルペンも、ロイヤルズやオリオールズのように堅調ではない。
2015年の覇権争いは、どのチームの手に。
対照的に、伸び盛りのドナルドソンが加わった打線は脅威だ。ホゼ・バティスタ、エドウィン・エンカーナシオン、ドナルドソンの3人だけで300打点を叩き出す可能性は十分にある。パブロ・サンドバル(9500万ドル/5年)やハンリー・ラミレス(8800万ドル/4年)が加わったレッドソックスも負けていないだろうから(こちらは怪我が心配だ)、今季のア・リーグ東地区では、投高打低のトレンドに逆らうような花火大会が見られるかもしれない。
いや、それとも昨年と同様、ザック・ブリトンやダレン・オデイといった渋い救援陣をそろえたオリオールズが、打力依存症の球団をさしおいて地区連覇を果たすのだろうか。バック・ショウォルター監督の采配力が一頭地を抜くオリオールズだけに、もしイチローを手に入れてスモール・ベースボールに磨きをかけるようなら、意外にするすると混戦を抜け出す可能性もある。
いずれにせよ、2015年はまだ明けたばかりだ。今回はおぼろな初夢にとどめておこう。春季トレーニングがはじまるあたりから、じっくりと観察してみたいと思う。