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中央大学をまたも襲った箱根の試練。
4年生の言葉に確信した復権の気配。
posted2015/01/09 10:40
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Hirofumi Kamaya
今回の箱根駅伝、閉会式場で頭が下がる思いがした学校があった。
中央大学である。
中大は前々回、5区で途中棄権。28年連続で獲得していたシード権を失う結果になった。昨年も苦戦を強いられ15位。今季は夏場に主力に故障が相次ぎ、卒業生までも「本戦に出られないのでは?」と不安を覚えていたが、夏合宿、予選会、そして初冬と取材を重ねるうち、私は「1区、2区で流れに乗れば、中大はシード権を取れる」と確信するにいたった。
なぜなら、季節が深まるにつれ、選手たちの表情が豊かになっていったからだ。
夏の菅平では、主将の永井秀篤はまだ出遅れていて、別メニューで練習を進めていた。永井は一昨年の箱根で、復路の8区でナンバーワンのタイムをたたき出していたが、途中棄権していた中大はオープン参加という扱いになり、区間賞は授与されなかった経験を持つ。
「練習で主将としての役割が果たせていないのが、悔しいです。それでも、4年生はじめ、上級生が危機感をプラスに変えているので、今年は楽しみなシーズンになると思います」
予選会を7位で突破、キッカケはつかんだ。
浦田春生監督は、「負の連鎖」から抜け出すキッカケを求めていた。
「昨年は、選手たちに途中棄権したイメージが心の中に残っていたように思います。それを取り除いてやれなかった。それでも、今季はトラックでもいいタイムが出始めていますし、“きっかけ”さえあれば、波に乗っていけると思うんですが」
秋、収穫が始まった。9月の日本インカレでは、エースの新庄翔太が5000mで表彰台に立った。
箱根駅伝の予選会では主力を欠きながらも、7位通過。この直後、合宿所で話を聞くと、北元雄主務が、
「みんな、これでキッカケをつかめたと思います。箱根、楽しみにしていてください」
と話してくれた。