オリンピックへの道BACK NUMBER
世界体操銀は、リオ五輪金への道筋。
男子団体、中国との差は「場所」だけ。
posted2014/10/08 16:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
団体戦のすべての最終演技者である張成竜の得点が出たあとの、日本チームの表情が、雄弁に内心を物語っているようだった。
内村航平はぽかんと口を開けたあとに苦笑いを浮かべ、田中佑典は、いやいや、と言うように首を振り続けた。そして加藤凌平の表情は、感情を押し殺しているかのようでもあった。
10月7日、中国・南寧で行なわれている世界体操選手権の男子団体決勝で、日本男子は、わずか0.1点という僅差で敗れ、銀メダルにとどまった。世界選手権36年ぶりの金メダルはならなかった。
加藤、内村、白井健三の3人で臨んだゆかで好発進した日本は、第5ローテーションまで逆転を許さず、0.991点差のトップで最終種目の鉄棒を迎えた。
加藤の得点は伸びなかったものの、田中が15.266とまとまりのある演技をしてつなぐと、内村は完璧な演技で締めくくる。15.400。何度もガッツポーズを見せたのは、手ごたえの表れだった。
内村が「場所の差」と表現した0.1点差。
日本が演技を終えて、残すは中国の3人のみ。最初の鄧書弟は14.758、続く林超攀は15.233。
日本のリードは15.866。張成竜の演技に勝負の行方がかかる。そのプレッシャーがかかる最終演技で、張はカッシーナに始まり、最後の伸身新月面まで次々に技を決めた。得点は、15.966。中国の逆転優勝が決まった瞬間だった。
中国が273.369、日本は273.269。0.1点の僅差で、日本は2位にとどまった。
内村はそのごくわずかな差を、「場所の差」と表現した。加藤は「採点競技の怖さを知りました」と振り返った。
張は確かに、Dスコア7.5という高難度の構成を演じきった。しかも団体決勝では唯一の出場種目だ。張りつめた状況にあって、それでもあれだけの演技を見せたのは、ロンドン五輪などを経験してきたベテランならではの強さであったことは間違いない。
ただその強さを認めつつも、日本の選手たちがそれでも割り切れない心情を垣間見せたのは、Eスコアの得点にあった。