オリンピックへの道BACK NUMBER
世界体操銀は、リオ五輪金への道筋。
男子団体、中国との差は「場所」だけ。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2014/10/08 16:30
張成竜の得点に複雑な表情を浮かべる内村航平。自身の演技後に優勝を確信したかのような表情を見せていただけに、悔しさは察するにあまりある。
林、張に出た高いEスコアへの疑問。
体操は、DスコアとEスコアの2つで構成されている。Dスコアは技の難しさを、Eスコアは技のできばえを示すものだ。難しい技を組み入れれば入れただけ、Dスコアの得点はあがる。そしてミスのない演技をすれば、つまり完成度の高い、美しい演技への評価はEスコアに表れる。
最終種目の鉄棒で、中国の林、張はEスコアでも高得点をあげた。ただし演技を振り返ると、林の演技にはやや粗さが見られ、張は着地で一歩前へ踏み出しながらも内村に迫るEスコアがつき、結果、計ったような逆転へとつながった。
中国での開催、大声援を受ける中でのその得点の出方が、内村をはじめとする選手やチームの関係者の表情に表れたのだろう。いや、割り切れない感情を持った人は、日本チームだけではなく、観客の中にも少なからずいただろう。
採点競技の「宿命」ではあるが……。
採点競技の宿命かもしれない。
ただ宿命ではあっても、黙って受け入れることなく、感じた疑問は疑問として示すことは決して問題ではないし、体操の今後へとつながることにもなる。だから、内村らが率直に語った言葉には意味がある。
こうして、届きかけた金メダルを手にすることができず、団体決勝は終わった。
強いて言うならば、予選2位での通過であったことが、わずかな傷であったかもしれない。それが中国が最後に演技をする展開を導いたし、最後の選手が見事な演技を見せれば、流れを味方にしてしまうことがあるからだ。
「プレッシャーのかかる中で、3人がミスのない演技をそろえてきました。0.1は気迫の差だったと思います」
内村の言葉である。