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内村航平、大本命が実力通りの金。
日本歴代最多に並ぶ15個目のメダル。
posted2014/10/10 16:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
圧倒的だった。
10月9日、世界体操選手権の個人総合で、内村航平が優勝した。
6種目の合計は91.965点。2位に1.5点近い差をつける、危なげのない勝利。すべての種目でただ1人、15点台の高得点をマークし、あらためて屈指のオールラウンダーたる存在感を見せつけた。
得点もさることながら、その得点へとつながった演技の内容そのものこそが、「圧倒的」という印象の根源だった。
最初の種目はゆか。内村は、着地のたびにぴたりぴたりと止まる。最後まで一切乱れのない着地に、ガッツポーズも出る。それは驚異的ですらあった。
第4ローテーションの跳馬がまた素晴しかった。着地のコントロールが難しい高難度の「ヨー2」に挑んだ内村だが、再び、ぴたりと決めた。
その直後、内村は両手でガッツポーズを繰り返し、自然と笑みがこぼれた。Eスコアは9.633。その演技からすれば、もっと高くてもよいのでは、と思わせるほどだった。
最終種目となった鉄棒でも、伸身新月面の着地でわずかに前に動いたがしっかりまとめてみせた。
日本選手最多のメダル数についに並んだ。
2009年の世界選手権個人総合で優勝して以来5連覇、ロンドン五輪とあわせれば6大会連続優勝。世界選手権でのメダル総数は15個となり、監物永三と並ぶ日本選手最多タイ。記念すべき優勝を果たした。
それでも、直後のテレビのインタビューでは、手放しでは喜びを見せなかった。
「ミスをしないという部分をずっとやってきたことと、着地ですね。目指してきたことなのでうれしいけど、満足できないところもある」
そしてあらためて、このように喜びきれない理由を言葉にしている。
「結果として見れば金メダル、5連覇ですごいよかったと思うんですけど、平行棒と鉄棒が……」
平行棒では、倒立でやや肘が緩んだ場面があった。鉄棒の着地はやや前への動きがあった。
どちらも、ほんとうに細かなミスに過ぎない。だが優勝の喜びとともに、そのミスが気になったのだ。