ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
ドルトムント、湘南、アギーレ――。
「下から目線の攻撃サッカー」とは。
posted2014/09/30 16:30
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
AFLO
サッカーにおける攻と守の概念は、思いのほか解釈が難しい。
ボールがあれば攻撃、ボールがなければ守備かと言えば、そう単純ではない。ボールを持つ側に、攻める気配がないケースもあるからだ。ボールをキープして、ひたすら時計の針を進める逃げ切り策がそうである。ゴールを「奪う」ことよりもボールを「守る」ことに熱心なのだから、攻撃とは呼びにくい。ポゼッションとは常に攻撃とイコールではないわけだ。
逆にボールを持たざる側が、敵の攻撃から自軍のゴールを「守る」こと以上にボールを「奪う」ことに力を注ぐケースもある。プレッシングがそうだ。受け身のニュアンスが強い「守備」という言葉との相性の悪さを感じてしまう。プレッシングとは極めてアグレッシブな行為だ。
事実、アグレッシブという言葉は「積極的」「攻撃的」と訳せる。ボールがないのに攻撃的――。そのプレッシングが苛烈さを極めると「攻撃的な守備」という奇妙な解釈が登場したりする。
ゴールを守るよりも、ボールを奪うことに積極的。
ボールを持つ者が持たざる者に激しく追い立てられ、自陣ゴール前へどんどん後退して行くシーンが一度や二度、いや頻繁に出現する。こうなってくると、もうどちらが攻撃側なのか分からなくなりそうだ。
ボールを守ることよりも敵のゴールを奪うことに積極的で、味方のゴールを守ることよりもボールを奪うことに積極的――。そうした戦いぶりを、総じて「攻撃的サッカー」と呼ぶのではないか。そしてその逆を「守備的サッカー」と定義できるのかもしれない。
例えば、香川真司の復帰したドルトムントは徹頭徹尾、ゴールとボールを奪いに行く攻撃的な集団だ。
彼らのスタイルは、電光石火のプレッシングと最速のカウンターアタックに特徴づけられる。戦慄のダイレクトプレーが最大の売り物であり、ポゼッションプレーはあくまで速攻がやりにくい局面における次善の策だ。だからポゼッションの率で敵を下回るケースは少なくない。それでも、彼らの戦いぶりを『守備的』と呼ぶ人はまずいないだろう。