ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
ドルトムント、湘南、アギーレ――。
「下から目線の攻撃サッカー」とは。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byAFLO
posted2014/09/30 16:30
アーセナルのラムジーを取り囲むドルトムントの選手たち。高い位置から多くの選手が連動したプレッシングは、時間の経過とともに相手の冷静さを奪い取っていく。
日本の「攻撃サッカー」は上から目線ではなかったか。
そこで、日本代表である。
ブラジル・ワールドカップで惨敗した日本の「攻撃サッカー」とは、いったい何だったか――。ボールがあることを前提にした「上から目線」のそれではなかったか。だからこそコートジボワールに「富」を奪われ、持たざる者に転落した途端、右往左往していたように思う。
ボールを失い、パッシブな姿をさらけ出した点ではドルトムントに屈したアーセナルとよく似ている。ドイツやスペイン、あるいはバイエルンやバルセロナといった超のつく富裕層が相手なら、持たざる立場に追いやられてしまう。彼らと同じ(上から)目線の攻撃サッカーで勝負になるだろうか。
この先も「攻撃サッカー」を志向するなら、ドルトムントや湘南のような下から目線のアプローチが必要かもしれない。そして新たに日本代表を率いるハビエル・アギーレは、そのことをよく心得た指揮官のように見える。就任会見で「ボールを『奪う』ことが重要だ」と話していたのが印象深い。
トルシエも「奪う」ことに重点を置いた監督だった。
かつて、同じようなセリフを口にした代表監督がいる。フィリップ・トルシエだ。
「強国相手にはボールを探しに行く必要がある。ボールがなければ、攻めようがないからだ」
守るためではない、攻めるためにボールを奪う――。トルシエが呪文のようにそう繰り返していたのを覚えている。
時の世界王者フランスに0-5という記録的なスコアで大惨敗を喫した後、圧倒的な強さでアジアを制したポゼッションプレーから、高い位置からのプレッシングを柱に据えたダイレクトプレーに舵を切った。戦術的にはドルトムントや湘南の「強奪速攻」に近い。選手たちに「奪う力」を求めるアギーレも、そうしたサッカーを目指しているのかもしれない。