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ウェルベックが“第2のアンリ”に!?
アーセナルがマンUとは異なる理由。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/09/20 10:40
第4節のマンチェスター・C戦でも88分に退くまで堂々のプレーを見せたウェルベック。待望の移籍後初得点はいつか。
自身のゴールによる貢献は大前提となる。
ストライカーにも、ゴールとアシストの数字に表れない貢献がある。速度と運動量でジルーを上回るウェルベックが、チームとしての攻撃力を最大限に引き出せる、より効果的なセンターFWとして定位置を獲得しても不思議ではない。マンC戦でゴールを決めたジャック・ウィルシャーとサンチェスが、頻繁に攻め上がることができた背景には、相手DFを吊り出す新CFの絶え間ない動きもあった。
もちろん、自らの得点による貢献は大前提だ。鍵を握るのは判断力の向上。マンC戦でのウェルベックには、アーセナルでのデビューを先制ゴールで飾る絶好機があった。相手GKとの1対1で選択したチップキックによる絶妙のループシュートは惜しくもポストに阻まれた。
「不運」の一言で片付けることはできるが、前進してきたジョー・ハートの脇を撃ち抜くという、よりシンプルな選択肢もあったはずだ。こうした瞬時の判断力は、ボールと人が迅速に動くサッカーを実現するため、「頭」の回転の速さも要求するベンゲル流の練習メニューで鍛えられるに違いない。
レギュラーの座を得て、センターFWへの転身なるか。
「シーズンに20点台のゴールを稼げるストライカーにはなり得ないという意見には反対だ」と、ウェルベックを擁護しているのは解説者のアラン・シアラーだ。ブラックバーンとニューカッスルでプレミアを代表するセンターFWとして鳴らしたシアラーは、「自分もユースから昇格したサウサンプトン時代は、ゴールを量産するタイプではなかった。自分がメインのストライカーだと実感できる環境を得て初めて、ゴールを重ねるために必要な自信が芽生える」と語っている。
ウェルベックは、生え抜きだったマンUでは得られなかった「レギュラーFW」の肩書きを、ひとまずアーセナルで手にすることになった。少なくともジルー不在の今後3カ月間は、ウェルベックが絶対的な第1ストライカーだ。
さすがに、ウェルベックがいきなりシアラーやアンリのようなストライカーに大化けすることはあり得ない。それでも、本格的なセンターFWへと脱皮することさえできれば、アーセナル・ファンも素直に「賢い買物」だと思える日がくるだろう。