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ウェルベックが“第2のアンリ”に!?
アーセナルがマンUとは異なる理由。
posted2014/09/20 10:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
アーセナルは、ラダメル・ファルカオが加わったマンチェスター・ユナイテッドから、玉突き状態で弾き出されたダニー・ウェルベックを獲得した。
アーセナルのファンにすれば、今夏の移籍市場で貧乏くじを引いたような気分かもしれない。長期契約での入団が決まったのは、市場最終日の9月1日。以来、巷で耳にする「貴重な国産選手で、まだ23歳の若さ」というウェルベック評は、移籍金1600万ポンド(約27億円)での獲得が「賢い買物」なのだと、ファンが自分で自分に言い聞かせているかのようにも聞こえる。
正1トップのオリビエ・ジルーが開幕後に足首を痛め、年内復帰が微妙になったことによる緊急補強とはいえ、ファルカオとウェルベックの間には歴然とした格差がある。マンUの新FWは、古巣アトレティコ・マドリーでリーグ戦通算68試合52得点を叩き出したゴールマシン。一方、アーセナルに流れたウェルベックは、リーグ戦52試合に出場した過去2シーズンで10ゴールのみ。約279分毎に1点という得点ペースは、約196分毎に1点という故障前のジルーにも劣る。
センターFWを任された代表では、結果を残した。
しかし、ウェルベックを数字の世界だけでジルーの代役としても心許ないと見なすのは酷というものだ。マンUでのウェルベックは控えFWだった。しかも、ウィンガー兼任。ピッチに立つ機会を得ても、前線中央ではなく左アウトサイドを持ち場に与えられる試合が多かった。
実際、イングランド代表として出場し、先発起用された先のEURO2016予選スイス戦(2-0)では、負傷欠場のダニエル・スタリッジに代わるセンターFWとして2得点。いずれも冷静なフィニッシュによるゴールだった。シュートの正確さでは、アーセナルで負傷欠場中のジルーを上回ると言ってもよい。
昨季までのウェルベックには、ストライカーとして良い意味での「自我」が足らないとする意見もあった。元マンUストライカーのアンディ・コールも、「ゴールを狙う姿勢がもっと欲しい」と言っていた識者の1人だ。
しかしこの点に関しても、センターFWとしてピッチに立ってゴールを狙う機会自体が足りなかったと考えられる。事実、「9番」を背負ったスイス戦では、チーム最多のシュートを放って予選白星スタートの立役者となった。