フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
北米チームがアイスダンス金銀制覇。
勝利の理由は「ロシアのコーチ」。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAP/AFLO
posted2014/02/18 11:55
左から銀メダルのテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア(カナダ)、金メダルのメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト(米国)、エレーナ・イリニフ&ニキータ・カツァラポフ(ロシア)。米国初のアイスダンス金メダルにして世界歴代最高得点での勝利だった。
20年あまりかけて実った教育。
実は3年前の2011年モスクワ世界選手権で、すでにシェピルバンドたちの生徒、北米チーム3組が表彰台を独占していた。彼が米国に移住してちょうど20年。地道に積み重ねてきた努力が形になったのである。
「でもロシアの関係者から、北米チームを育てたことを責められたことはありません。ぼくのコーチキャリアはロシアではなく、北米に行ってから築いたものですから」
シェピルバンドは、そう言って微笑んだ。通常、エリートコーチはある程度のレベルに達した選手しか受け入れない。だが彼の場合は、子供の頃からコツコツと年月をかけて育てていったのだから、文句のつけられようもないだろう。亡命当時迷惑をかけたタラソワとも今では和解して、ロシアの連盟との関係も悪くないという。
「それにアイスダンスは、狭い社会。ごく一部の限られた人たちだけが知識を持っている美しいスポーツです。どこの国の生徒でも、頼まれたら全力を尽くして指導します」
ロシア連盟のゴルシコフ会長は彼の元コーチ、故パホモワのパートナーであり、夫でもあった人だから、まさに狭い社会である。
トップ10組はすべてロシアのコーチ。
トップの2組だけではない。ソチ五輪のアイスダンスでトップ10組のうち、ロシアのコーチが関わっていない組は一組もいない。
今回惜しいところでフリーの決勝進出を逃した日本のキャシー・リード&クリス・リードのコーチ、ガリト・チャイトはイスラエル出身だが、現役時代はやはりロシアの有名なコーチを何人も渡り歩いたスケーターだった。ちなみに今季の彼らの振付は、シェピルバンドが手掛けている。
ソ連の崩壊と時を同じくしてロシアのアイスダンスの知識と伝統は世界中に広がった。そして現在、世界中でそれが実を結んでいる。