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激戦の女子フィギュアに名乗り!
2つの幸運を持つ15歳、リプニツカヤ。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2014/02/18 10:40
ショート、フリー両方に登場し、プルシェンコとともにロシアの団体金メダルの立役者となったリプニツカヤ。シングルでも浅田ら日本勢の強力なライバルになりそうだ。
フィギュアスケートの団体戦でショート、フリーと首位に立ち、ロシアの金メダルに貢献した15歳のユリア・リプニツカヤ。驚異的な柔軟性のスピンや、正確なジャンプで、一気に女子シングルの金メダル候補とささやかれ始めた。リプニツカヤとは一体何者なのか、そして女子シングルの行方は――。
'98年6月5日生まれの15歳。実はこの年齢が、彼女の隠れた武器である。フィギュアスケートはその年度の7月1日に満15歳であることが五輪出場の年齢条件だが、リプニツカヤは25日差で年齢条件を満たす。浅田真央やキム・ヨナは共に9月生まれのため、2005年7月1日時点では14歳で、'06年トリノ五輪に出場できなかった。
同じくロシア女子で、今季のグランプリファイナルに進出したエレーナ・ラジオノワは'99年1月生まれで、わずか半年の年齢差で五輪に出場できなかった。一方、昨季まで五輪メダル候補と目されていた17歳のエリザベータ・タクタミシェワは、16歳になった途端に体重が激増し、ロシア国内選手権で10位という有様だ。
身体が変化する前の15歳に、母国での五輪という強運。
女子は16~18歳で身体が変化し、体重の増加や身長の変化でジャンプのスランプを迎える選手が多い。年齢条件を満たす15歳以上だが、成長期前の少女体型という、絶妙なタイミングで五輪出場できるリプニツカヤは非常に運が強い。
それに加えて、この五輪がロシア開催というのが拍車をかける。当然だがロシアの観客は、自国選手により大きな拍手を送る。演技中の拍手は、彼女の背中を押すことになるだろう。
ではリプニツカヤの素顔はどんな少女なのか。ロシアの田舎町、エカテリンブルクで育った彼女は、乗馬や動物と触れあうのが好きな素朴な少女だったという。母の教育方針で、新体操とスケートを習っていた。
「ストレッチは2歳の時から毎日欠かしていません。4歳でスケートを始めて、最初に3回転を降りたのは8歳の時です。才能があるかもって母が考え、10歳の時にモスクワに引っ越して本格的にスケートを習うことになったんです。私自身は選手になることなんて全く考えていませんでした」