スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
最高の出塁率と、最少の犠牲バント。
打線の「我慢強さ」で楽天・初優勝!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/27 11:55
優勝に感情を爆発させる楽天ナイン。「我慢強さ」の陰には、チームの雰囲気の良さがあったのかもしれない。
2人の外国人と、個性的な発想で組まれた打順。
個々の成績を見ていくと、四球の数で大きく貢献しているのがアンドリュー・ジョーンズである。
打率は低いものの、四球数99個は2位の栗山(西武)の91個を抑えてトップ。主軸打者が我慢強く出塁することが打線のトーンを決めた。
チーム2位の四球数はマギー。メジャーリーグではいまひとつ活躍の場に恵まれなかった男が、日本では長打力を発揮すると同時に、選球眼の良さも見せつけた。
そして日本人選手では、7月31日から1番ライトに定着した岡島が出塁率.407で、チームの得点機会を作り出していった。
岡島をトップバッターに定着させたことは、今季の星野監督の好采配のひとつ。パ・リーグ優勝を決めた西武戦でも4打数3安打とその存在感を見せつけた。
四球の楽天と、ホームランの巨人の日本シリーズが見たい。
面白いのは、出塁率の高い聖澤(.350)を9番に置いていること。下位から始まったとしても、聖澤、岡島と並べば、それなりの脅威になる。
そして出塁率.370の銀次が3番に座って、ジョーンズ、マギーの前に走者をためる戦術が可能になった。
私が見るところ、楽天に連敗する印象が少ないのは、出塁率の向上が安定的な得点能力につながったからだ。
クライマックスシリーズに向け、この地道な野球が続けられれば、頂点を極めることは決して不可能ではないだろう。
個人的には楽天対巨人の対戦が見たいと思っている。巨人はセ・リーグのなかでは四球が少ないチームだからだ。
この対戦が実現すれば、打線に対する戦略の違いが明快な日本シリーズとなるだろう。