スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
最高の出塁率と、最少の犠牲バント。
打線の「我慢強さ」で楽天・初優勝!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/27 11:55
優勝に感情を爆発させる楽天ナイン。「我慢強さ」の陰には、チームの雰囲気の良さがあったのかもしれない。
楽天の初優勝、その要因として考えられるのが、「我慢強い」ことである。
これはなにも精神面の話ではない。
選手が打席に立った時に、英語でいうところのdiscipline(規律)がしっかり守られ、ストライクとボールの見極めが出来るようになったことが大きい。
ブラッド・ピット主演で話題になった『マネーボール』的な発想に従うなら、野球で点を取りたいならば、
・とにかく塁に出る
・アウトになるリスクを冒さない
この2点が非常に重要である。
まず、「アウトになるリスク」から考えてみよう。
野球で、わざわざアウトになるプレーとして、代表的なのが犠牲バントである。楽天は犠牲バントがリーグ1少ない。ここまで106個しかなく、トップの日本ハムが139個ということを考えれば、かなり少ないことが分かる。星野監督が、アウトが確実に増えるリスクを減らして選手にどんどん打たせる、あるいは犠牲バントを選択するよりも、ボールの見極めをしっかりとさせる方を優先させたことがわかる。(数字は全て9月26日現在。以下同じ)
この数字は、今季の楽天の特徴といえる。
高い出塁率を支える、パ・リーグトップの四球数。
そして、出塁率。
塁に出られるのなら、ヒットでも四球でも構わない。そこに価値の差はないという考え方は、いまや革新的なものから、常識へと進化した。
今季の楽天の場合、出塁率がトップなのだ。
'12年の出塁率 | '13年の出塁率 | 四球数 | |
楽天 | .307 | .339 | 451 |
ロッテ | .320 | .329 | 406 |
ソフトバンク | .304 | .337 | 407 |
西武 | .316 | .327 | 442 |
オリックス | .301 | .322 | 386 |
日本ハム | .315 | .327 | 438 |
出塁率を支えているのが四球数で、楽天が選んできた四球の数、451個はパ・リーグではトップの数字である。
今季、統一球の反発係数が高くなり、打撃成績が飛躍的に向上している影響もあって、昨季と今季の各チームの出塁率を比較すると、各チームとも数字を伸ばしている。
打者としては「今年は飛びやすくなった」という前向きな気持ちがあり、どちらかというと、どんどんバットを振っていくことが目立ったが、そのなかで楽天の打者の我慢強さが光った。