スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
上原の快投とボストンの勤勉。
~レッドソックス快進撃の理由~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/09/20 10:30
クローザー上原の存在が頼もしいレッドソックスは、2007年以来の世界一を狙う。
10人もの選手が高いOPSを記録する不思議。
ところが、チーム全体の打撃成績が際立っている。打点=763、OPS(長打率と出塁率を足した数字)=.793はいずれもリーグ1位(2位はどちらもタイガース)で、打率=.275もリーグ2位(1位はタイガース)につけているのだ。さらに駄目押しのデータを挙げると、本塁打数=164本がリーグ7位なのに対して、四球数=557個はリーグ1位(2位はレイズ)。OPSが高い理由も、容易に納得できるはずだ(数字はいずれも9月17日現在)。
と書けば、2013年型レッドソックスの特徴はすでに明白だろう。
今季の彼らは、打線に切れ目がない。100打数以上の選手のOPSを調べてみると、.954のオルティースを筆頭に、なんと10人もの選手が.760以上のOPSを記録しているのだ。エルズベリー、ダスティン・ペドロイア、ナーポリといった主軸はもちろんのこと、なかにはマイク・カープ、ジャロッド・サルタラマッキア、スティーヴン・ドゥルーといった伏兵もふくまれる。
思い出される'04年のワールドシリーズ。
おや、'04年にワールドシリーズを制したときのレッドソックスも、下位打線が強くなかったか。そう思う方は少なくないはずだ。なるほど、あのときはビル・ミラー、ケヴィン・ミラーといった曲者が打線の層をずいぶん厚くしていたものだ。
ただ、当時はマニー・ラミレスやオルティースが絶頂期だった。カート・シリングのパワー・ピッチングも忘れることはできない。
それにひきかえ、今季のレッドソックスは、攻撃の組み立て方にスモール・ベースボールの匂いがする。つまり、打者の辛抱強さと、打線の切れ目のなさ。より具体的にいうなら、粘り強い待球作戦で出塁し、その走者をなんとか生還させようとする勤勉な姿勢。
日替わりヒーローがつぎつぎと出現した(4月のナーポリや8月のヴィクトリーノ)のも、この姿勢あってのことではないだろうか。ナーポリやペドロイアは、サッカーでいうと、前線でつぶされ役になって得点機を演出する選手を連想させる。この姿勢が貫かれるかぎり、ポストシーズンのレッドソックスは侮りがたい存在になってくるだろう。