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「ボランチ長谷部誠」新天地で始動。
欧州でセンターラインを担う意味。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/09/19 10:30
昇格チームで現在最下位のブラウンシュバイク相手に引き分けという結果は喜べない。ビージンガー監督は「長谷部一人の力で勝てるわけではない」とコメント。専門誌の採点はキッカーが3.5、ビルトは4と辛口評価だった(最高が1、最低が6)。
好スタートを切った長谷部が口にしたのは意外にも……。
後半になってボールタッチ数こそ減ったものの、1試合を通してのパス成功数は長谷部がトップだった。日本代表での活動があったため、チームメイトとプレーしたのは1週間にも満たないことを考えれば、上々の出来と言えるだろう。
だが、攻撃面での貢献、とくにパスを展開していく部分について手ごたえはあるのではないか、と問われた長谷部が口にしたのは意外にも課題だった。
「そこは他の選手よりも自分が勝っているところだと思うので、あとはそれプラス、守備の部分でもっともっと貢献していかないといけないと思います。守備の部分や球際の勝負の部分で、あそこのポジションだったら75%くらい勝たないといけないというか。フィフティー、フィフティーでは弱い。こっちではツバイカンプフ(一対一の局面での勝敗)のことが良く言われますけど、ドイツでボランチをやるという意味では、そこの部分も課題だと思うので」
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この日もエリア内でボールを奪われ、そのまま相手にドリブルで振り切られたシーンがあり、「経験ある選手として、ああいうのはしちゃいけない」と続けて反省の弁を口にした。
実は中央でプレーした時間は長くない。
長谷部が課題をはっきりと口にするのには、理由がある。ボランチというセンターラインのポジションで起用されるのは体格的にハンデのある日本人にとっては難しいと、ドイツで5年半以上にわたりプレーしてきた中で感じてきたからだ。ヴォルフスブルクでのブンデスリーガ初優勝、初めてのCL出場、残留争いと、様々な経験をしてきた中で、長谷部が起用されてきたのは3ボランチの右ボランチ、右サイドのMF、右サイドのサイドバックがほとんどであり、中央でプレーした時間は長くない。
かつて、「『日本人』というくくりで語るのはあまり好きじゃないけど」と丁寧に前置きしながら、こう話していた。
「フィジカル(の能力)が必要なセンターラインのところで常にやっていける日本の選手というのは、今までも、今も、そんなにいないのかなと感じている面はあるんですけどね」
あるいは、自分の本来のポジションであるボランチについても、こう話していたこともある。