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一番の武器はその驚異的な適応力!?
二刀流論議を超える器の大谷翔平。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byKyodo News
posted2013/07/10 10:30
大谷の登板は5/23から計5回(7月9日現在)。6月18日の広島戦では「投手・5番」で先発出場。先発投手がクリーンナップを打つのは50年ぶりだった。
ホークスの強力打線相手に新球種を試す大胆不敵さ。
2試合目は、ホークスもカーブに慣れてくる。いや、1試合目でも降板間際になるとカーブはきっちり対応されていた。
当然、カーブに頼るだけではきびしい。どうするかと見ていたら、大胆にインコースを攻める投球を見せた。150km近い球速のストレートで内角を攻められれば打者は楽ではない。特に前回の登板でセンターオーバーの本塁打を打たれた内川に対しては、投げられたほうが思わず気色ばむようなきびしいコースを攻めていた。ストレートが抜け気味だったこともあって、全部がねらったとおりだったとはいわないが、そういう強気の攻めが2試合目を1失点で切り抜けられた理由だろう。
1試合目の失点は3点ともクリーンアップに打たれたものだったが、2試合目は打点は許さず、内川、松田は無安打に抑えた。
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びっくりしたのは途中で1球だけカットボールを投げたことだ。まだ武器といえるほどの制球や威力ではなかったが、あの強力な打線を相手に、軽く試運転して見せたのにはちょっと呆れた。
きわどいタイミングの牽制球もあった。投げることだけで精一杯の段階はクリアしたということだろう。
数字だけでは計りきれない将来性が投手大谷にはある。
公式戦での投球回数は25回3分の2。オープン戦がようやく終わったといったあたりか。それでこれだけの投球をする。植物の成長を早回しで見せられているような感じ。自由研究のひまわりや朝顔が1ミリでも伸びているのを見るとうれしいものだ。大谷の場合は伸びの幅もスピードもけたが違う。教えた成果をすぐに見ることができる。指導者からすれば、これほどやりがいのある選手もいないだろう。
数字の上では大したことのない「投手大谷」だが、見ると途方もない期待を抱かせてくれる。よい数字の出ている打者大谷の力はいうまでもない。どっちにするなどといわず、思う存分、二刀流をきわめて欲しい。