濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
伝説の“金網”を復活させた『VTJ』。
男たちは「格闘技の首都」を目指す。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2013/06/30 08:01
王者対決を制した堀口(写真左)は、「UFCなどもっと上の舞台に行けば、(自分は)もっと強くなりますから。次はアメリカに行きたいと思っています」と宣言。
ベテランファイターたちも新たなる挑戦に身を投じた。
アメリカでの活躍を目指すのは若い選手ばかりではない。今大会、アメリカ人ファイターとの3vs.3対抗戦には、高谷裕之、所英男、宇野薫のベテラン3人が登場(宇野、所が一本勝ち、高谷がKO負け)。
所vs.テイラー・マコーストンの契約体重は130ポンド(59kg)。バンタム級からフライ級(125ポンド=56.7kg)への転向を視野に入れているという。階級転向はアメリカで勝負するため。「笑われるかもしれないですけど」としながらも、所はその決意を記者会見で語っている。「今は北米とかが主流になってきてるので。挑戦しないと後々、後悔するんだろうなという気持ちがあります」。
感情と理念の理想的な合体にコアなファンは夢を懸ける。
22歳の堀口も、35歳の所も、アメリカでの闘いに向けて大きな一歩を踏み出した。それを後押ししたのは、2850人、超満員札止めの観客たちだ。
日本人ファイターが“格闘技の首都”を目指す。その明確なコンセプトに、格闘技ファンは賛同したのである。格闘技界で最も大きな夢に“乗った”と言ってもいい。といって、この大会は“アメリカの二軍”や“UFC予選”でもなかった。
団体の看板をもかけたチャンピオン同士の対決。功成り名を遂げたベテランが挑む新たなチャレンジ。その豪華かつリスキーな闘いに“対アメリカ”のコンセプトがクロスしたからこその成功ではないか。いわば感情と理念が理想的な合体を果たしたのである。
時代を象徴する選手たちが、時代を象徴する試合形式に挑む。『VTJ』は、日本格闘技界で最も高い現代性を持つイベントだ。