青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
今季メジャー挑戦の総決算。
石川遼は何を得て何を失ったのか?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/08/22 08:00
全米プロゴルフ選手権で最終の18ホールに向かう石川遼。開催コースとなったウィスリングストレイツは1000近いバンカーの数で有名な難コースであった
望んでいたのとはかけ離れた成績で石川遼の今季のメジャー挑戦は終わった。
メジャー最終戦となった全米プロ選手権は通算6オーバーの119位であえなく予選落ちとなった。出場した日本人5選手が全滅したこともあいまって、惨敗の感はさらに色濃くなった。
「自分としてはすごく上達したつもりで挑んだので、壁に当たってはね返されてきたような気持ち。悔しい経験をこれからの練習にぶつけたい」
石川が姿を消した後の決勝ラウンドでは、21歳のローリー・マキロイや22歳のジェイソン・デイといった若手が優勝争いに名を連ね、最後に激戦を制したのも25歳の新鋭、ドイツのマーティン・カイマーだった。
カイマーと同い年のダスティン・ジョンソンは最終ホールのペナルティーによって悲劇の主人公となり、カイマーとプレーオフを争ったバッバ・ワトソンとの超飛ばし屋対決が実現することはなかった。
「若さ」と「飛ばし」を武器にどこまで世界と戦えるのか?
上位陣の顔ぶれを見るとマキロイに代表されるフレッシュさとD.ジョンソン、ワトソンの飛ばし屋コンビが強く印象を残した。
若さと飛ばし。
それはいずれも石川のイメージとも合致するものだったはずだ。日本ツアーでは怖いもの知らずの攻めと飛距離のアドバンテージを生かして現在の地位を築いた。しかし、今回は完全に蚊帳の外に置かれてしまった。
若さはどこにあっても変わらぬ大きな強みである。確たる地位を築きつつあるマキロイは2歳年上、カイマーにいたっては7歳も年が離れている。この年代における数年の経験の差は大きい。石川はまだまだ若い。だからこそ今後の伸びしろに大きな期待を抱くことはできる。
一方で飛距離に関しては、世界レベルで見れば石川は飛ばし屋とはいいがたい。
日本ツアーでは5位(8月2日時点)の平均飛距離も米ツアーでは108位(規定ラウンドに届かないため参考記録)にしかならない。D.ジョンソンやワトソンはフォローであれば400ヤードを優に超えるドライバーショットを持っている。今後の肉体的強化をもってしても、彼らと競い合うことはかなり難しいだろう。
世界と対等に戦うために、石川が目指す新たな武器とは?
進撃を支えてきた片翼がアドバンテージとならないのであれば、違った翼を手に入れる努力も必要になる。ドライバーの飛距離を少しでも増やしながら精度アップにまい進するのもいいが、今大会で未熟さを痛感したというアプローチに磨きをかけることでもいいはずだ。
「ショートゲームのうまさは抜群」(鈴木亨)
「打ち方のアイディアが多い。あのひらめきはいいよね」(丸山大輔)
「ピンを攻めていけるのはあのアプローチがあればこそ」(小田龍一)
日本ツアーの先輩たちからはドライバーよりも、アプローチの感性と発想力に驚く声も多く聞かれている。
マスターズでは心の弱さを突きつけられ、全米オープンでは4日間戦い抜く体力の必要性を学び、全英オープンではパッティングのつたなさにため息をつき、全米プロではアプローチの課題が浮かび上がった。
それぞれのメジャーの経験の中から、来年こそ上位で戦うために何を選び取るのか。