青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
真剣そうだったり、笑ったり……、
石川遼とキャディーは何を話してる?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2010/08/11 10:30
自身もジュニア・ゴルファーとして活躍していた加藤大幸キャディー。石川遼との出会いは古く、石川が小学3年生の時とのこと
マウンドに駆け寄ったキャッチャーが口元をミットで隠して一言二言ピッチャーに声をかけ、励ますように軽く尻を叩いて戻っていく。バスケの試合終盤の勝負どころで、タイムアウトを取ったヘッドコーチがホワイトボードを手に事細かな指示を与え、選手達は意を決した表情でうなずき返す……。
試合そのものが進行していないオフプレーの場面、外から観ている者はそこで交わされている会話を想像することしかできないが、まさに今、目の前の試合にドラマチックな伏線が張られたのだという期待を抱くことはできる。
知れば思わず脱力!? キャディーと交わす言葉の内容とは?
1ラウンドに4時間以上かかるゴルフも極めてオフプレーの時間が長い競技だ。距離やラインを読み、素振りする時間を含めても実際のプレー時間は1時間にも満たないだろう。耳を澄ましても聞こえないギャラリーロープの向こう側で、その間に石川遼はどんな言葉を交わしているのだろうか。
「試合中にゴルフの話はほとんどしてないんですよ。中クラで58を出した時も全然してないと思う」
石川の帯同キャディーを務める加藤大幸キャディーはこちらのドラマチックな期待感にあっさりと首を振った。世界の主要ツアーにおける最少ストローク記録となった5月の中日クラウンズ最終日の58。驚くべき快挙を達成した時のことでさえ、思い出せる会話はこんな平凡なものだという。
「あしたも仕事だよね?」
「テレビマッチでしょ」
「でも最終日の翌日にチェックアウトだと、荷物の片づけしなくていいから楽だね」
「今回って帰りは新幹線なんだっけ?」
快挙を刻んだショットとショットの間に交わされていたのは、翌日の予定の確認という悲しいほどにアンチドラマチックなものだった。
優勝した昨年9月のフジサンケイクラシックでも、ウイニングパット直前にひそひそ話した2人の会話は感動や興奮とは無縁だった。石川と加藤キャディーの視線の先にあったのはグリーン脇に飾られた優勝副賞の高級外車。
「いやあ、勝ったね」
「車どうするの?」
「最初に乗るのはやっぱりお母さんでしょ」