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復帰を決断した勇気を讃えたい――。
ホンダ、F1第四期への期待と不安。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byKyodo News
posted2013/05/17 11:55
5月16日、ホンダ本社で行われた記者会見にて。マクラーレンのマーティン・ウィットマーシュ最高経営責任者(左)とホンダの伊東孝紳社長。
たとえ不完全な復帰であっても、その勇気を讃えたい!
マクラーレン以外のチームの中にもホンダの復帰を願う者が少なくない。
現在、F1は11チームあるが、エンジンは4社で賄っている。
内訳はルノー4チーム、メルセデス3チーム、フェラーリ3チーム、コスワース1チームだ。このうち、新エンジン・レギュレーションになる'14年からはコスワースが減り、3社になる可能性が高い。そうなると、売り手市場になり、エンジン代金が高騰する。それでなくとも、高度なエネルギー回生システム付きのV6ターボ・エンジンは、現在のV8自然吸気エンジンよりも高くなり、チームの財政が圧迫されることが予想されているだけに、チームにとっても自動車メーカーに再び参入してもらいたかったところなのである。そもそも、FIAはそれを狙ってレギュレーションを改正したとも言われているくらいだ。
ただし、喜んでばかりはいられない。新エンジンでの戦いは、来年の2014年からスタート。ホンダが参戦するのは'15年なので、1年乗り遅れる格好となる。現在のF1はシーズン中のテストが原則禁止されているので、先に1年間戦っているライバルチームに対して、経験値で引けを取る。
また、撤退から5年後の今回の復帰決定が早すぎるという意見もあるだろう。
あるいは、第三期の幕引きの際に「休止」ではなく「撤退」という言葉を使ったのだから、禊(みそぎ)はまだ終わっていないという声もある。
それでも、どんな理由があろうとも、撤退したときの虚しさに比べれば、たとえ不完全な形であっても参戦しようとした勇気を讃えたい。
記者会見が行われた5月16日。ホンダ本社のエントランスには3台のF1マシンが展示されてあった。
1台は1965年にリッチー・ギンサーがメキシコGPで優勝したRA272。
もう1台は'88年にアイルトン・セナとアラン・プロストの最強コンビで16戦15勝を果たしたMP4/4。
そして3台目が第三期の唯一の勝利を飾ったシーズンに走っていたRA106。
ホンダの第四期F1活動が、いまゆっくりと動き出した。