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熱血スポーツキャスターが
説く“挫折”との付き合い方。
~松岡修造・著『挫折を愛する』~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2013/04/29 08:00
『挫折を愛する』 松岡修造著 角川oneテーマ21 781円+税
本誌の新連載コラム「熱血修造一直線」の著者、松岡修造さんの最新刊のタイトルは『挫折を愛する』。スポーツキャスターとして情熱的に取材をする著者は、明るくポジティブな印象がある。そんな松岡さんが何故、“挫折”というネガティブなテーマを題材にしたのだろうか。
「実は僕は人に話しかけることは苦手だし、消極的で弱い人間なんです。僕も含めて我々は、挫折を敗北と捉え、“もう終わりだ”と受け止めることが多いと思うんです。ところが、トップアスリートはそうじゃない。キャスターとして取材をするなかで、彼らが敗北から立ち上がる姿を何度も目の当りにしてきました。そこにはいくつかの方法論があったんです」
一度も挫折することなく、世界の頂点に立ったアスリートなどいない。'95年のウィンブルドンでベスト8入りを果たした自らの現役時代の経験や、取材を通じて感じたことを題材に、折れやすい心を強くするための“方法論”を説いたのが本書である。
マイナス思考に陥りそうな時にプラスに変えていく“テクニック”。
「挫折をした人に悩みを相談されたとき、僕は『おめでとう。君はそれだけ本気なんだよ』と声をかけます。挫折するのは目標がしっかりしている証拠です。どうでもいいやと取り組んだことに挫折をする人はいません。そしてその“挫折”を好きになることができれば、もっと言えば、愛することができればきっと前を向いていけるはずなんです」
挫折を乗り越えることは決して簡単ではない。松岡さんやトップアスリートだからできることなのではないだろうか。
「この本で紹介した方法論は、僕が出来なかったことです。なんでも前向きに捉えられる人なんて滅多にいませんからね。マイナス思考に陥りそうなときにプラスに変えていくのは、情熱や根性論だけではできません。あくまでテクニックなんです」
吉田沙保里や北島康介の“敗北の受け止め方”や、石川遼の“勝てない状況での思考法”を紹介しながら、松岡流の“テクニック”が明かされる。そのなかで著者は“すべては自分の心しだい”と繰り返し説いている。そのことに気が付いたのは松岡さんが21歳のときだった。