南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
スペインの「エレガント」が頂点に!!
誤審とファウルにまみれた決勝戦。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2010/07/12 12:40
パスサッカーへの対策は、ドイツばりのラフプレー。
表彰式で審判団が舞台に上がると、スタジアムのオレンジ色に染まった一角から、大ブーイングが沸き起こった。オランダからはるばるやって来た彼らは、一生このイングランド人を忘れないだろう。
ただし、敗因のすべてが、審判にあったわけではない。
オランダの戦略は、いつ破綻してもおかしくないものだったからだ。
今大会、スペインは初戦こそスイスに0対1で負けたが、試合を重ねるごとにパスの呼吸のずれが修正され、準決勝のドイツ戦ではユーロ2008で優勝したときのようなコンビネーションを取り戻していた。
その完成されたパスサッカーを、いかにオランダが防ぐかが見所のひとつだった。
オランダは、かつてのドイツが得意としていた方法を採用する。
ファウル覚悟で、スペインの選手の足元を削りに行ったのだ。前半に3枚、後半に3枚のイエローカードを受けてしまったが、それによってスペインのリズムを崩すことができた。
ダーティーな戦略の代償は、延長戦での退場であった。
後半20分のシーンが、スペイン側の苛立ちを象徴していた。ファンボメルがピッチに倒れたシャビに手を差し伸べたが、シャビは拒否したのである。汚いファウルを連発しているくせに、善人面をするなと言わんばかりに。
スペインのパスサッカーが機能せず、逆にオランダはカウンターから決定機を作った。後半17分、ロッベンがGKカシージャスと1対1になった場面でゴールを決めていれば、試合はまったく違うものになっただろう。
しかし、ダーティーな戦略の代償は、延長戦にやってきた。延長後半4分、センターバックのハイティンガがイニエスタを倒し、2枚目のイエローを受けて退場になったのである。
もし彼がピッチに残っていれば、その7分後に、イニエスタにゴールを決められることはなかっただろう。
つまり、優勝を手にできなかった最大の敗因は、審判ではなく、決定機でゴールを決められなかったという「非効率さ」にあった。