南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
スペインの「エレガント」が頂点に!!
誤審とファウルにまみれた決勝戦。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2010/07/12 12:40
本来ならば、「美しいサッカーをした国」が優勝したということだけが、語り継がれるW杯になるはずだった。しかし、今大会は決勝にいたるまでに、あまりにも印象的で、重大なレフェリーの判定ミスがあった。
「誤審の大会」
今大会をのちに振り返ったとき、必ずそう揶揄する人が出てくるだろう。とりわけオランダ国内において。
そのシーンは、延長戦の後半10分に訪れた。
貴重なCKを誤審で失った直後にリズムを失ったオランダ。
オランダはエリアのドリブル突破により、ゴール前でFKを得た。残り時間を考えると、最後のチャンスになるかもしれない。スナイデルは相手の壁が他の選手に注意をとられている隙に、素早く右足を振りぬいた。
その機転が裏目に出た。
FKは壁の左端にいた選手に当たり、そのままゴールラインを割った。本来ならCKだ。だが、イングランド人のウェッブ主審はそれを見逃したのか、スペインのゴールキックと判定したのである。
当然、キッカーのスナイデルも、近くにいたファンボメルも、猛然と抗議した。優れたキッカーがそろうオランダにとって、CKは大きな得点源だ。準々決勝のブラジル戦の決勝点もCKからだった。オランダの選手たちは、判定が覆るはずもないのに、抗議を続けてしまった。
その直後の流れから、スペインの決勝点が生まれた。
試合終了直後、審判への抗議で騒然となったスタジアム。
ボールはスペインの左サイドへとつながれ、トーレスが右足でクロスを上げる。これはDFにクリアされたが、こぼれ球をセスクが拾い、DFラインへふわりと浮いたパスを出した。走り込んだイニエスタに残されていた仕事は、右足でボールをミートすることだけだった。
延長後半11分のゴール。これで勝負あった。スペインが1対0でオランダを下し、初のワールドカップ優勝を成し遂げた。
怒りが収まらないのは、オランダの選手たちだった。
試合終了のホイッスルと同時に、ファンボメルとマタイセンがウェッブ主審のもとに駆け寄る。見かねたファンマルバイク監督が止めに入った。だが、今度は退場になったハイティンガが、突っかかっていった。