日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ヨルダンで苦杯喫したザックジャパン。
攻守に見えた“アンマンの教訓”とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/03/27 12:30
試合後、「僕らがもっと点を取っていれば勝てた試合だった。それに尽きます」とコメントした香川。2失点の守備陣を責めるべきか、1得点の攻撃陣を責めるべきか……。
ヨルダンの先制点は、カナダ戦と同じパターンだった。
前半ロスタイムだった。
CKから中央に速いボールを送られ、そこに飛び込んできたバニアテヤに先制点を許す。
カナダ戦の失点と同じようにCKからだった。
ヨルダンの指揮官はカナダ戦を偵察に訪れており、セットプレーが日本の弱点だと確信を持っていたはず。ここの修正がカナダ戦から図れていなかったということ。「(マークを)最後外してしまった僕の責任」と岡崎は唇を噛んだが、守り方という部分でチーム全体の問題とも言える。
日本、ヨルダンともに相手の弱点を突いたのだが……。
「点を取れ」
それがハーフタイムでの指揮官の指令だった。
だが後半の立ち上がり、日本はヨルダンの球際の強い守備を崩せない。前線にボールを入れたところでつぶされ、そこからカウンターを受けるようになる。
10分過ぎから右サイドを起点にチャンスをつくるようになるのだが、15分に一瞬の隙を突かれる。前線にパスを送ろうとしたところでボールを奪われてしまい、そこからカウンターを受けたのだ。スピードとパワーを兼ね備える1トップのハイルの強引なドリブルの前に、日本のDF陣は次々と突破され……一瞬のうちに追加点を許してしまっていた。
セットプレーとカウンター。
まさに日本の弱点を突かれての2失点。日本もヨルダンの弱点を突いてはいたのだが、決定機を逃がしているうちに修正されてしまっていた。
逆にヨルダンには「セットプレーに気をつけたほうがいい」「カウンターに気をつけたほうがいい」と警戒を強める前にやられた印象を受ける。
決める、決めないではこういった影響も出るということだ。
「(今回の予選の)アウェーのなかでは一番いい試合をしたと思う」
だが2点リードを許した後、日本はばたつかなかった。
前田に代わりハーフナー・マイクが投入され、清武と岡崎がポジションチェンジして中に切れ込む清武と香川の距離が近くなってから、再び攻撃が活性化した。
24分には長谷部の縦パスを受けた清武が浮き球のパスを前線に送る。長身のマイクに引きつけられた相手DFの裏をとった香川がシュートを突き刺して1点を返す。その2分後には、香川がトップ下から下りてきてボールを引き出し、右サイドに出ていく内田篤人を使うことで、そこからPKのチャンスを得た。遠藤保仁が決められなかったものの、残り20分、得点の雰囲気は漂っていた。
酒井高徳と交代して入ってきた駒野友一のパフォーマンスが良く、終盤には駒野のクロスからマイクが競り、こぼれ球を今野泰幸がミドルシュートを放つという場面もあった。しかし結局はあと1点が奪えないまま、4分間のロスタイムは過ぎ去った。
この日も奮闘した面持ちのままで岡崎は言った。
「(今回の予選の)アウェーのなかでは一番いい試合をしたと思う。それなのに負けてしまったのが課題。日本代表の負けというのは重いし、特にアジアで負けることは重いと感じている」