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フェブラリーSで会心の勝利を飾った、
グレープブランデーの周到なプラン。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2013/02/20 10:30
グレープブランデーは一昨年のジャパンダートダービーでGI初制覇するも9月に右前脚蹄骨を骨折して約10カ月休養。昨年は6戦1勝も今年は東海ステークス、フェブラリーステークと2連勝。
蹄骨の骨折を乗り越えて、ダートへの適性を開花させた。
グレープブランデーは3歳の7月に交流GIのジャパンダートダービーを勝った期待馬だった。秋にはJCダートや東京大賞典で古馬とダートのトップを競うだろうと思われたが、蹄骨の骨折で休養を余儀なくされる。
10カ月休んで復帰したが、なかなか本調子には戻らなかった。しかし、使われながら徐々に本来の素質を開花させていく。きっかけになったのは12月のJCダートだった。16頭立ての11番人気とほとんど注目されていなかったが、国内のダートのトップホースがそろったここで人気を大きく上回る5着に入る。
そして前走の東海ステークスでは先行馬がみな残る展開の中、直線で7番手からの差しきり勝ちを演じた。直線だけで前をかわして3馬身差をつけたのだからみごとな内容だった。
格上の併せ馬とのハードな“スパーリング”が功を奏す。
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この立ち直りの背景には安田隆行調教師のさまざまな工夫があった。JCダートのレースの前からブリンカーを着用させて、集中力を高めることをねらった。着けて最初のレースでは気が散って大敗したが、2戦目からは効果が出た。
東海ステークスではレース中に舌を出して折り合いを欠くのを矯正しようと舌を縛ってみた。
そうした工夫の仕上げがフェブラリーステークスの前の調教だった。1週間前に強めの調教をするのは珍しくないが、このときの併せ馬の相手にロードカナロアを選んだ。ロードカナロアはスプリンターズステークスに加えて暮れの香港スプリントにも勝った国際的なスプリンターである。いってみれば、日本タイトルに挑戦するボクサーが世界王者とスパーリングしたようなものだった。一歩間違えば圧倒されて併走の形にならず、調教の中身が伴わない可能性もあったが、グレープブランデーはよく王者についていった。