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健闘オリオールズと逆襲アスレティックス。
~伏兵はプレーオフで輝けるか?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/10/05 10:31
驚異的な追い込みを見せ、最終戦で地区優勝を決めたアスレティックス。マネーボール健在を見せつけた。
1点差ゲームの強さが際立つ、東地区のオリオールズ。
東地区オリオールズは、7月中旬、首位のヤンキースに10ゲーム差をつけられていた。7月末になっても、勝ち越しの数はわずかに5つ。過去14年間連続負け越しという屈辱の歴史を思えば、逆襲の前に息切れするだろうと考えるのが妥当なところだった。
ところが、8月以降のオリオールズは39勝20敗というハイペースで突っ走った。
シーズン全体を通しても、同地区対決の結果が43勝29敗。これはヤンキースの41勝31敗を上まわる地区最高勝率だし、もっと凄いのは接戦での勝負強さだ。1点差ゲームの結果が29勝9敗(ヤンキースは22勝25敗)、延長戦にもつれ込んだ試合の結果がなんと16勝2敗(ヤンキースは6勝3敗)。同地区最下位に沈んだレッドソックスが、延長戦で2勝10敗の成績しか残せなかったことを思うと、采配の差をはっきりと感じさせる。
なんと、12名にも達するオリオールズの先発経験投手!!
接戦での強さを裏付けるのが得失点の差だ。
ヤンキースが得点=804、失点=668と安定した強みを発揮したのに対し、オリオールズの場合は、得点=712、失点=705とかなりきわどい綱渡りを演じてきた。シーズン全体を見渡しても、オリオールズの先発経験投手はなんと12名にも達する。他球団は5人の投手でローテーションを組むのが普通だから、オリオールズの場合、投手陣のやりくりがいかに大変だったかがよくわかる。ショウォルターの勝負強さと工夫の才は、大リーグ全体を見渡しても群を抜いていた。
西地区の負け犬、アスレティックスの追い込みも驚異的だった。
もともとシーズン終盤に強い傾向を持つ球団なのだが、今季は、153試合を消化した時点で首位レンジャーズに5ゲーム差をつけられていたことは見落とせないだろう。
アスレティックスは、この差を一気に縮めた。
ラスト9ゲームが8勝1敗。首位のレンジャーズが同時期、2勝7敗と低迷したこともあるが(最後の直接対決もアスレティックスの5勝2敗)、伸びしろの大きな若手が急成長するときは、本当に眼をみはらされる。最終戦に先発したA・J・グリフィン(24歳)などは、メジャーへの昇格が6月下旬になってからだった。それが、最終戦こそ打ち込まれたものの、抜群のコントロールを武器に7勝1敗、防御率=3.06の好成績を残したのだから、野球はやはりわからない。