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悲願のツール1勝へ。
新城幸也が掴んだ「ヒント」。
~欧州自転車レースの頂点を目指す~
text by

山口和幸Kazuyuki Yamaguchi
photograph byYuzuru Sunada
posted2010/06/08 06:00

「ジロでステージ優勝を狙う」との言葉通り、見事な走りを見せた
自転車のロードレースは欧州でサッカーの次に人気のスポーツである。とりわけイタリアには自転車作りを手がける職人やメーカーが多く、自転車への愛着も並々ならぬものがある。「自転車レースだったら他国には負けない」という自尊心も強い。
そんなイタリア中が熱狂する大会が、毎年5月に開催されるジロ・デ・イタリアだ。7月のツール・ド・フランス、9月のブエルタ・ア・エスパーニャと同様に23日間でその国を一周するロードレースで、いずれも「大きな一周」という意味の「グランツール」と呼ばれている。
93回目を迎えた今年のジロに、身長171cmの小柄な日本人選手が初出場し、イタリアの人気者になった。Bboxブイグテレコム所属、新城幸也(あらしろゆきや)。沖縄県出身の25歳だ。
勝者以上の走りを見せた新城をイタリア中が喝采。
距離162kmで行なわれた第5ステージで、新城は15km地点で単独アタック。これに他の3選手が追走してゴールまで逃げ続けた。途中で1人が脱落し、数にものを言わせた後続の大集団が残り1kmで3人を飲み込もうとしたが、新城が一気にスパート。3人は大集団から逃げ切った。
空気抵抗の大きい先頭に立ってゴールを目指した新城は、最後に後続に抜かれ3位となるのだが、それでも147kmの長きに渡りテレビ画面をほぼ独占。イタリア中の喝采を浴びた。レース通で知られるイタリアのファンは、勝者以上の走りを見せてくれた選手を評価するのだ。
それでも新城はステージ3位という結果に納得していない。
「悔しい。こんなチャンスは二度とないかも知れないのに。日本のみなさん、ごめんなさい!」
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