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チェコに完勝したポルトガルが見せた、
C・ロナウドという「矛」の活かし方。  

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/22 11:25

チェコに完勝したポルトガルが見せた、C・ロナウドという「矛」の活かし方。 <Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

試合終了間際、チェフがコーナーキックのチャンスでポルトガルのゴール前に突進した! C・ロナウドも最後の詰めを怠らず、ディフェンスに集中する。

前線にボールを供給さえできれば勝てるポルトガル。

 ポルトガルは中盤の組み立てを省略。深い位置から両ウィングの位置にパスを散らし、そこで起点を作る方法をとる。これはオランダを攻略した省エネ方式と同じである。

 前線にボールさえ供給できれば、あとはロナウドやナニの個人技で相手を崩すことができるためだ。加えてポルトガルは途中から、ロナウドやナニが中盤に下がってポストを務め、そこからのワンツーでディフェンダーの裏に抜けるやり方なども使うようになった。

 このアプローチは奏功した。チェコはラインをじわじわと押し下げられ、守備に追われる時間が増えていく。ロナウドがオープンプレーからのシュートやFKでゴールを脅かすなど、前半の30分過ぎからは、ポルトガルが完全にゲームを支配したといっていい。

 後半は、前半にも増して一方的な展開になる。チェコがカウンターに転じることができた場面は数えるほどだったし、ポルトガルがゴールを奪うのは時間の問題に過ぎなかった。

 そして後半34分、ついにその瞬間が訪れる。右サイドのタッチラインそばでナニがボールをキープ。そこに走りこんできたモウチーニョがボールをピックアップしてクロスを上げ、ロナウドがダイビングヘッドを叩き込んだ。

持てる力を最大限に出して敗北したチェコには、温かな拍手が。

 誤解のないように言っておくと、チェコは決して悪いチームだったわけではない。

 選手は組織的にプレーしていたし、決して勝負をあきらめなかった。欠場したロシツキーの穴を埋めるべく、19番の攻撃的MFイラチェクなどは実に意欲的なプレーを見せている。

 だが残念ながら今のチェコには、スピードで勝負できるFWもいなければ、かつてのコラーのように前線でボールをキープできる選手もいなかった。

 逆にポルトガルは、組織性や戦術性で必ずしもチェコに優っていたわけではない。

 だが個人技の高さとロナウドという武器を最大限に活用して、準決勝に駒を進めた。

 試合終了後、チェコのサポーターは敗れた選手たちに温かい拍手を送っている。ボール支配率はポルトガルの56%に対して44%、シュート数に至っては20本対2本という内容を考えれば少し意外な気もするが、それはおそらく今の代表チームの限界を知っているからだろう。チェコがかつての輝きを取り戻すためには、かなりの時間と新たな武器(人材)が必要かもしれない。

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