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リーガ1部に復帰したガリシアの両雄、
デポル&セルタを支えるベテランの姿。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byMarcaMedia/AFLO

posted2012/06/15 10:30

リーガ1部に復帰したガリシアの両雄、デポル&セルタを支えるベテランの姿。<Number Web> photograph by MarcaMedia/AFLO

5月27日、2部での優勝を決めてチームメイトに胴上げされるデポルのバレロン。

 ジャウミーニャ、マカーイ、マウロ・シウバらを擁してリーグ初優勝を果たし、チャンピオンズリーグでもミランやマンチェスター・ユナイテッドら強豪クラブを次々と倒した“スーペルデポル”。

 司令塔モストボイを中心としたパスサッカーでUEFAカップ出場権争いの常連となっていた“エウロセルタ”。

 2000年前後のリーガ・エスパニョーラを彩ったガリシアの両雄、デポルティーボとセルタの名前を憶えているサッカーファンも多いだろう。だが、この2チームはその後徐々に凋落していき、デポルティーボの2部降格が決まった昨年5月には、リーガ・エスパニョーラの勢力図から姿を消すことにまでなっていた。

 だがその1年後、彼らは揃って1部昇格を果たした。今季は2部の舞台で見ることになっていたガリシアダービーが来季は再び1部の舞台で復活することになるわけだが、それは長年リーガを見続けてきたオールドファンにとってこの上ない喜びだろう。

チーム消滅の危機を乗り越えたデポルティーボだが……。

 だが、現在の2チームに栄光の時代の面影はほとんど残っていない。

 結果的には全てがうまくいったものの、今季デポルティーボは1年での1部復帰を実現すべく、危険な賭けに出ていた。テレビ放映権料を失い年間予算の大幅削減を強いられながら、高額のオファーを受けていたグアルダードら主力選手を軒並み残留させたのだ。

 昇格できなかったらクラブ財政が火の車となり、最悪消滅の可能性すらあったという。そんなプレッシャーに打ち勝ったチームは29勝4分9敗の勝ち点91という堂々の成績で2部を制し、見事に自動昇格を成し遂げたのである。

 だが来季へ向けては既にグアルダードのバレンシア移籍が決まり、守備の要であるコロットも放出が濃厚な状況にある。かといってクラブの金庫には全く余裕はなく、他のクラブと同じくレンタルや移籍金ゼロの選手を中心に補強していくことになるだろう。

セルタはカンテラ生え抜きの若い力で復活を遂げた。

 1年での返り咲きに成功したデポルティーボとは対照的に、セルタの昇格までの道のりは何倍も長く、険しいものだった。'03-'04シーズンに2部落ちした後、翌年には1部復帰を果たしたが、再び'06-'07シーズンには2部に落ちてしまう。その後の2シーズンは昇格どころか3部降格の危険にさらされるほどの低迷に陥り、計5人の監督を挿げ替える混沌とした状況が続いた。

 そんなどん底の状態に光明が見えはじめたのは、財政難からカンテラ重視の方針に切り替えざるを得なくなった'09-'10シーズンのことだ。

 結局2部12位にとどまったものの、この年に台頭したカンテラーノ達が主力として定着し、長期的視野に立ったチームの基盤が整いはじめる。今季はシーズン半ばに調子を落とした時期があったものの、最終節で2位を確定させた。

 選手の質、量共に現在のままでは1シーズン1部を戦い抜くのは難しいだろう。とはいえデポルティーボと同じく補強に動けるだけの資金力もないだけに、来季は厳しい残留争いに巻き込まれることは避けられなさそうだ。

【次ページ】 悲しみと喜びをファンとともに分かち合ったバレロン。

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