スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
モイヤーの快挙と高齢大リーガー。
~史上最年長記録が破られる日~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/04/22 08:02
17日、パドレス戦に先発し、7回を6安打2失点(自責点0)に抑え、最年長勝利記録を80年ぶりに塗り替えた。
メジャーリーグの軟投派には選手生命が長い投手が多い。
オマー・ビスケル ('67年4月24日)
マリアーノ・リベラ ('69年11月29日)
斎藤隆 ('70年2月14日)
ジム・トーミ ('70年8月27日)
ダレン・オリバー ('70年10月6日)
生年月日の古い順に上位5人(モイヤーを除く)を並べてみた。もっとも、40代の選手は球史を振り返ってもそう珍しくはない。近ごろの大選手でも、ハンク・アーロンは42歳まで、ピート・ローズも45歳までプレーした。
さらにさかのぼれば、軟投派の投手には寿命の長い人が多い。59歳でマウンドに戻ってきたサッチェル・ペイジは極端な例外だが、ホイト・ウィルヘルム(49歳)、フィル・ニークロ(48歳)、チャーリー・ハフ(46歳)、ティム・ウェイクフィールド(45歳)といったナックルボーラーは、申し合わせたように長い現役生活をまっとうした。
40代のイチローも肉体の衰えは技術で乗り越えられる。
いや、冷静に考えれば変化球投手だけではない。ノーラン・ライアンやランディ・ジョンソンは46歳まで投げたし、ロジャー・クレメンスが引退したのも45歳の年だった。超高齢の打者はなぜか第二次大戦前に多いのだが(例外は57歳まで働いたミニー・ミニョソと49歳で引退したフリオ・フランコぐらいだ)、高齢の投手はむしろ近ごろのほうがふえている。スポーツ医学や栄養学の発達はもちろん大きな要因だが、投球術によるサバイバルはいまや現実的なものとなったのだ。
そう考えてくると、モイヤーの記録もだれかに破られる可能性がないとはいえない。
40代の先発投手はいまのところ見当たらないが、ホゼ・コントレラスやミゲル・バティスタといった救援投手(どちらも'71年生まれだ)が9年後に勝ち星を拾う可能性も皆無というわけではない。
それはそれでひとつの楽しみだが、もうひとつの楽しみは、イチローやデレク・ジーターが、あと1、2年で40代選手の仲間入りをするという事実だ。
イチローには大リーグだけでの3000本安打、ジーターには4000本安打の大目標がある。この金字塔を実現させるためにも、彼らにはできるだけ長く現役生活を張りつづけてもらいたいと思う。