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「名刀の切れ味」が戻るのはいつ?
絶不調の雄星が、今、やるべきこと。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/04/05 13:00

「名刀の切れ味」が戻るのはいつ?絶不調の雄星が、今、やるべきこと。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

公式戦は始まったばかり。悩むには早すぎるのでは?

 キャンプでは、疲労が溜まり本来の投球ができなくなると感じるとフォームを変えた。そこにこだわるあまり球威、制球力が落ちた。この試合でも、本人も分かっているように四球を恐れるあまり、そして「チームに迷惑をかけたくない」という思いが強いために、結果、ボールを置きにいく。

 そんな雄星を見た関係者が、首をかしげながらこう言っていた。

「公式戦が始まったばかりなのに、何を悩む必要があるんだろうね。西武は高校生の雄星に惚れて1億を出したわけでしょ。だったら、なんでそのままやらないんだろう? プロでは良くも悪くも結果を評価されてから、後のことを考えていけばいいのに」

 高校時代は、雄星の研ぎ澄まされた刀の切れ味に誰もついていけなかったが、プロでは代名詞である速球以外にも、内角、外角に投げ分けられる制球力、そしてなにより、「自分のボールは打たれない」という強い気持ちが要求される。多くの新人選手は、まず、プロの高いレベルを体感してから対応策を模索していくものだが、雄星の場合はそれを事前に試しすぎてしまった。そのため、「20年にひとり」と評価された力、左腕という名の名刀を、今失いつつある。

高校時代に「近づける」のではなく「取り戻す」べき。

 だから、と思う。それは彼に期待する全ての人間が思っていることだが、悩む前にがむしゃらに投げればいいのではないか、と。

「今は高校時代(の投球)に近づいている」

 そう雄星は言った。それは周囲を期待させるためのリップサービスでも虚勢でもなんでもない。そう感じさせてくれるボールが、この試合で1球だけあった。

 2回の先頭打者、梶本勇介へのカウント1-3からの5球目。雄星の言葉を借りれば、ストライクゾーンに置きにいく場面だ。それが、梶本の膝元を鋭く突いた。スピードは出ていなかったが、フォームは安定し、腕もしっかり振れていた素晴らしいボールだった。

 本人にとって、何がいいボールなのかは分からない。だが、今の雄星がすべきことは、常にがむしゃらにプレーし、そのなかで得たいいイメージを強く意識することだ。

 この試合を視察した指揮官の渡辺久信は、「よくなっているとは思う。これからだよ」と少なからず評価したが、「ずっと(二軍で)投げさせる」と厳しい表情は崩さなかった。

 雄星は「高校時代に近づいている」といった。そうではない。今は、「近づける」のではなく「取り戻す」時期なのだ。

 2回に見せたあのボールをこれからの試合で自在に投げられるようになれば、首脳陣の評価は高まり、一軍デビューも現実味を帯びてくる。

 それはつまり、雄星が持つ名刀の切れ味が復活したことを意味する。

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