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<ナンバー発 提案コラム> 2014年ブラジルW杯に“レジェンド”枠を。
text by
弓削高志/吉崎エイジーニョyugetakashi
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/12/20 06:00
<日本篇> 日本サッカーにONを創り出せ。 吉崎エイジーニョ=文
レジェンド枠構想は、日本サッカー界にとっての「ON(王・長嶋)」を作り出す最後のチャンスでもある。実績・人気ともに曇りのない国民的英雄を生み出せるのだ(特に長嶋茂雄のイメージ)。サッカーが野球に対し、国民的人気度で遅れを取ってきた理由のひとつには、この不在があるのではないか。中田英寿はアウトローだし、何よりすでにピッチを去っている。最大の適任者カズに対しては、'98年フランスW杯時にサッカー界自らその誕生の機会を絶ってしまった。
カズの魅力とは、その道程に「光と影」が入り混じる点だ。しかし最後にワールドカップ出場の夢を叶えたなら……「影」の部分もより色濃く描かれるだろう。
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フットボール史には、今思えばウソのような試みがいくつかある。'93年、中田英寿も出場したU-17世界選手権日本大会では、「キックイン」が試験採用された。スローインをやめ、タッチラインからすべてのボールを蹴り入れていたのだ! ピッチ上の新ルールが大胆に試されるのだから、エントリー規定の変更も一考の余地ありだろう。
だからこそ、'14年大会は千載一遇のチャンス。開催国がブラジルである点がミソだ。
「あいつを入れろ」という重圧から監督が解放されるメリットも。
じつに'78年アルゼンチン大会以来、36年ぶりの南米開催となる。'86年大会のコロンビアの開催返上(経済的理由)という悲劇がついに払拭され、フットボールの「2大大陸」の一つに大会が戻ってくるのだ。メモリアル要素を付け加える余地があるのではないか。
サッカーは欧州だけのものではない。世界中のものだ。これを伝えるインパクトある試みとして、ファンの参加意識に訴える。「選手選出」の夢を見てもらおうじゃないか、と。
たとえ一度の実験で終わるにしても、「南米への帰還」というお祭りを彩るにはピッタリだと思うのだが。現場の監督としても、上手く活用できれば「あいつを入れろ」という重圧から解放されるメリットがある。