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<ナンバー発 提案コラム> 2014年ブラジルW杯に“レジェンド”枠を。
text by
弓削高志/吉崎エイジーニョyugetakashi
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/12/20 06:00
各国共通の儀式といえるだろう。そこで小誌は提案したい。
あの男がマラカナンのピッチに立つ日を夢想して――。
Dream Plan for 2014 World Cup
「レジェンド枠」構想
ワールドカップ出場国の選手枠は現状23名であるが、
「レジェンド枠」としてプラス1名の枠を設ける。
「レジェンド枠」に該当するのは、自国のサッカー発展のためにその身を捧げ、
現在もサッカーに対して真摯な姿勢と愛情を注いでいる現役選手とする。
各国サッカー協会(連盟)が主催するインターネット国民投票により選出され、
FIFAの承認を受けた「レジェンド」は、各国の代表監督によって選出された
23名の選手と同様、ベンチ入り、出場の権利を持つ。
なお、「レジェンド枠」を採用するかどうかは、
オリンピックにおける「オーバーエイジ枠」のように、
各国代表監督及びサッカー協会(連盟)の判断に委ねる。
<イタリア篇> ベテラン王国のリアリズム。 弓削高志=文
もし、'02年の日韓W杯前に「レジェンド枠」ルールが制定されていたとしたら、ロベルト・バッジョは24人目のアズーリとして日本へ行けたかもしれない。当時35歳だったバッジョは、セリエAのシーズン最終盤に国営放送の試合中継番組で行なわれた、代表入りを問う生電話投票で約60%の圧倒的支持を集めた。次点のビエリやインザーギなど名だたるFWたちは一桁止まり。世論はバッジョ一色だったが、当時のトラパットーニ監督(現アイルランド代表監督)は、国民的英雄の招集を断固として拒んだ。W杯で優先されるべきは結果であって、民意ではない。
ただ現監督プランデッリには、来年のEURO本大会に向けて、すでに“24人目”がいる。予選突破を決めた今秋、突然の難病に倒れたカッサーノだ。智将は彼を見舞った際、「おまえを24人目として連れていく」と告げている。心憎いフレーズは励ましの域を出ないが、エース兼ムードメーカーだったカッサーノを帯同させることは、チームの結束を高める上で決してマイナスにはならない、という智将の判断だろう。
代表への期待の重みが増したイタリアでは……。
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アズーリの誇る4度のW杯優勝を支えてきたのは、冷徹な実利主義だ。選考をめぐって大会ごとに巻き起こる議論も、結局のところ論点は“勝てる面子か否か”に集約される。財政危機や北部独立運動など、国を揺さぶる問題が山積する現在のイタリアで、代表に寄せられる期待の重みは増した。負う責任の重さゆえに代表監督の選考結果は尊重される。
『ガゼッタ・デロ・スポルト』のマッシモ・チェッキーニ記者は「W杯を戦うには、23人の選手たちの一体感と結束がまず最優先。人気先行になりかねない24人目の選考は危険すぎる」と論じた。他のベテラン記者たちも「賛同する協会と代表監督は皆無だろう」とかなり懐疑的だ。ベテラン王国イタリアにあって「レジェンド枠」構想への視線は、極めてシビアだと言えよう。