フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ロシアのトゥクタミシェワとソトニコワ。
フィギュア界に五輪金メダル候補現る。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAP/AFLO
posted2011/11/03 08:03
浅田真央や安藤美姫らでも成し遂げられなかったシニア大会初出場での初優勝を飾った14歳のエリザベータ・トゥクタミシェワ(写真中央)。優勝インタビューで憧れの選手を問われると「そんな選手はいない」と答えた強気なメンタル面でも評価が高い
トゥクタミシェワより実力があるソトニコワもデビュー。
昨年度の世界ジュニアチャンピオンは、この週末中国杯でシニアデビューを飾るアデリナ・ソトニコワだ。
同じくロシア出身で、12歳でロシアタイトルを手にした選手である。この7月に15歳になったばかりで、昨シーズンは出場した大会すべてで優勝している。ライバルのトゥクタミシェワに比べると、すでにシニアの体型だけに、技術もおそらくこれから大きく崩れることはないだろう。
ソトニコワは、さらに難易度の高い3ルッツ+3ループを跳ぶ。過去にスルツカヤと安藤美姫しか成功させたことのない組み合わせのコンビネーションジャンプだ。
トゥクタミシェワはスケートカナダで鈴木明子らベテランを退けてデビュー戦で優勝したが、ソトニコワのデビューはどのような展開になるだろう。カロリナ・コストナー、村上佳菜子らが、彼女のシニアデビュー戦優勝を阻むことができるだろうか。
ロシアだけでなく世界のフィギュア関係者が待っていた逸材。
バンクーバー五輪でロシアが1個もフィギュアスケートの金メダルを取れずに終ったのは、1960年スコーバレー五輪以来の屈辱だった。2014年ソチ五輪を控えて選手の強化に必死のロシアにとって、トゥクタミシェワとソトニコワの二人はまさに救世主。大切な金の卵なのである。
「ソチ五輪に向けてのプレッシャーというのはあります。色んな方面から感じるわ。でもあまり考えないようにしているの」
トゥクタミシェワは、あっさりとそう答えた。
もっとも彼女たちに期待をしているのは、ロシアの関係者だけではない。フィギュアスケート関係者全体の中で、彼女たちのシニアデビューを待ち望む空気が充満していた。
過去何年間か、女子シングルは停滞していると言われてきた。そのもっとも大きな理由は、ジャンプの回転不足の判定が厳しくなったことである。
今の採点ルールでは、選手が演技中に体を休めて息をつく間がとれない。スピンもステップも、少し気を抜けばレベルが取れずにポイントを落とす。そんな中で難易度の高いジャンプを次々完璧にきめろというのは、確かに酷な要求ではある。
数年前、男子でも4回転ジャンプをやる選手が減り、リスクをふむより安全にまとめる戦略が主流になった時期があった。だが男子はおよそ3年でその停滞期から脱出し、選手たちは新採点方式に体力を順応させて再び4回転が必須の時代が戻ってきた。
だが女子ではまだ、20年も前と同じジャンプコンビネーションで選手が表彰台に上がるというのが現状である。