フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ロシアのトゥクタミシェワとソトニコワ。
フィギュア界に五輪金メダル候補現る。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAP/AFLO
posted2011/11/03 08:03
浅田真央や安藤美姫らでも成し遂げられなかったシニア大会初出場での初優勝を飾った14歳のエリザベータ・トゥクタミシェワ(写真中央)。優勝インタビューで憧れの選手を問われると「そんな選手はいない」と答えた強気なメンタル面でも評価が高い
いよいよ来るべきものが来たか、という気がした。
ロシア出身のエリザベータ・トゥクタミシェワが、10月28日からオンタリオ州ミシサーガで開催されていたスケートカナダで、初出場、初優勝を飾った。
トゥクタミシェワとはまた、覚え難い名前である。だが間もなく、世界中のスケートファンがその名前をスラスラと言えるようになるだろう。何しろ彼女はまだ14歳。おそらくこれから長いこと、女子のトップに君臨するに違いない。
「初めてのシニアGP大会で、ジャッジがどこまで点を出してくれるのか、まったく想像もつかなかった。でもいい演技ができて嬉しいわ」
シニアデビュー戦の優勝会見なのに、トゥクタミシェワははしゃいでいる様子はまったくなかった。質問した記者の目を見ながら、落ち着いて自分の言葉で語った。
「ジュニアとシニアの大会の違い? 正直に言うと、あまり感じなかったの。試合は試合。どこの大会に行っても、その大会の規模はあまり考えずに、集中して滑るようにしているんです」
14歳とは思えないこの落ち着きは、子供のときからチャンピオンになるべく教育されて培われてきたものに違いない。
メンタルや技術、演技力にも隙が無い、恐るべき新人。
スケートカナダではSPからいきなり、3ルッツ+3トウループを完璧に跳んでみせた。これまでイリーナ・スルツカヤなど、数えるほどの女子しか成功させていない難易度の高いコンビネーションジャンプである。重箱の隅をつつくように回転の判定が厳しくなった今の採点ルールに変わってから、こんなリスクの高いコンビネーションを成功させたシニア女子はキム・ヨナだけだ。
トゥクタミシェワはこの試合では見せなかったが、トリプルアクセルも練習で成功させているという。しかも子供体型のスケーターにありがちの、「ジャンプだけ」の選手ではない。洗練された体の動きとリズム感、ぱっちりした目でジャッジを見据える目力など、パフォーマーとしても必要なものをすでに兼ね備えている。
怖い新人が出てきたものだ。
だが本当に怖いのは、実は彼女がジュニアで2番手だったということである。