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ザックが追い求めたトップ下の“幻影”。
本田不在の苦境を乗り切るためには? 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/09/17 08:01

ザックが追い求めたトップ下の“幻影”。本田不在の苦境を乗り切るためには?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「個人的にもトップ下で先発しましたが、ポジショニングや簡単なボールロストでなかなか上手くリズムに乗れずチームに迷惑をかけてしまったなと思っています」と自らのブログに記した長谷部誠

タイプの違う柏木や長谷部に代役を求めたが……。

 北朝鮮戦はトップ下に柏木陽介、1トップに李忠成が入った。

 柏木は味方のスペースをつくるのがうまく、パスセンスも光る。しかし本田とはまるでタイプが違う。本田のようなポストプレーを求めるのは難しく、1トップの李は万能タイプではあるものの、相手を背負うプレーよりは裏を狙ったり、前を向いてボールを受けることで持ち味を発揮するタイプだ。高い位置でボールがなかなか収まらず、フリーになれない香川が低い位置まで顔を出してボールを受け取るシーンも少なくなかった。柏木は何とかスペースをつくり出そうとして動くものの、クサビに入ったボールから展開するやり方に慣れている周囲とうまく噛み合わなかった印象が強い。ここの連係がスムーズでなかったことが李にも影響したように感じた。

 そして、ザッケローニは続くウズベキスタン戦で柏木に代えて、長谷部をトップ下に置くわけである。

 この意図は前回のコラムでも記述したとおり、フィジカル能力に長けたボランチのアフメドフを抑える意図があったはずだ。そしてもうひとつ、指揮官は本田のような役割を求めて、フィジカルが強く、ヴォルフスブルクでもトップ下でプレー経験のある長谷部に白羽の矢を立てたのだと試合を見て実感した。

本田の“幻影”に囚われていては得点に結びつかない。

 実際、長谷部は慣れないポストプレーを積極的にこなそうとしていた。印象深かったのは、前半11分のプレー。遠藤保仁からクサビのボールを受けようとした長谷部の近くに、香川が走りこんでポジションを取っていた。そこからパスが出てくればチャンスになったのだが、長谷部のところでボールをうまく収められなかった。

 このシーンから何が見えるかと言えば、香川は長谷部に「本田」をイメージしていたということ。無論、香川だけではないのだが、長谷部に本田の役割を求め過ぎた感も否めないのだ。

 長谷部は言うまでもなくボールを持ち、前へ推進する力が大きな特徴。彼自身も「自分の位置が高すぎた。もっと低い位置でもらって前に出ていけばよかった」と語ったように、本田の役割をかなり意識していたのかもしれない。ザッケローニは「(長谷部は)背負ってのプレーに慣れていないので、遠藤の近くでプレーさせようと思った」と前半途中に長谷部の位置を下げたのは周知の事実である。指揮官の判断が遅れていれば、試合のなかで建て直しにもっと時間がかかってしまっていたはずだ。

 この2試合、新たなトップ下のオリジナルな特徴を活かそうとしたうえでのマイナーチェンジではなかった。本田がチームを離れてから試合までの時間がなく、本田不在の戦い方を詰められなかった。本田の“幻影”を追ってしまったことが、なかなかゴールに結びつかなかった原因のひとつであるように思えてならないのだ。

【次ページ】 本田不在の日本代表はいかにして予選を戦うべきか?

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