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サイ・ヤング賞の行方とビッグフォー。
~覇権争いを左右する好投手たち~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byMLB Photos via Getty Images
posted2011/08/15 08:00
ナ・リーグ東地区首位を独走するフィリーズのエース、ロイ・ハラデイ
サイ・ヤング賞の争いが、今季も面白い。
普通に考えれば当然の成行きだ。
2010年のシーズンは「投手の年」と呼ばれた。そこで潮目が大きく変わったとすれば、去年から始まった投高打低現象がしばらくはつづいても不思議ではない。
2010年、1試合あたりの平均得点は4.38だった。2011年の場合、8月8日までの1試合あたりの平均得点は4.24とさらに下がっている。3割打者の数が、両リーグを通じてまだ30人近くいるという事実には、思わず眼をこすってしまいそうだ。
C・C・サバシアは対レッドソックス戦の成績がネックに。
では、サイ・ヤング賞の有力候補にはどんな顔ぶれが並ぶのか。シーズンが3分の2を経過したところで球界を眺め渡してみると、目新しい名前はそう見当たらない。
まずア・リーグは、ジャスティン・ヴァーランダー(タイガース、16勝5敗、防御率=2.30)とジェレッド・ウィーヴァー(エンジェルス、14勝5敗、防御率=1.78)の一騎打ちになる公算が大きい。
え、最多勝タイのC・C・サバシア(ヤンキース)を忘れては困るじゃないかという声は聞こえてくるが、彼の場合、当面の敵レッドソックスを相手に投げたときの成績が悪すぎる。4回先発して0勝4敗、防御率=7.20という数字は、まるで蛇に睨まれた蛙だ。それ以外の成績が、21先発、16勝2敗、防御率=2.11と素晴らしいだけに、この打ち込まれようはよけいに目立つ。
宿敵レッドソックスのジョシュ・ベケットにしたところで、2.17の防御率は優秀だが、9勝(4敗)という勝ち星数が物足りない。
ノーヒッターも達成。抜群の安定感を誇るヴァーランダー。
一方、ヴァーランダーの場合は安定感が図抜けている。8月8日までに25回先発して4完投2完封(5月にはノーヒッターも達成した)という数字も立派だが、5月末から7月上旬にかけての9試合では、すべての試合で7イニングス以上を投げ、すべての試合で自責点2以下の成績を残しているのだ。
しかも7月31日の対エンジェルス戦では、宿敵ウィーヴァー(防御率1点台を達成すれば、2005年のロジャー・クレメンス以来だ)との直接対決で、8回を1安打に抑える堂々の投球内容を見せている。