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今季開幕、気になるやつら 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2006/04/03 00:00

今季開幕、気になるやつら<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 最近はすっかりWBC関連の話題ばかり取り上げてしまい、肝心のメジャーについて触れることができなかった。そこで今回は、シーズン開幕を直前に控え、個人的に注目している関心事をいくつか紹介しておきたい。

●日本人初のメジャー捕手

 いうまでもなく今季マリナーズと契約した城島健司選手のことだ。投手や他の野手とは明らかに異なる特殊なポジションだけに、彼がどこまで適応できるのか気になるところ。

 残念ながら自らアリゾナに赴き、直接取材する機会に恵まれなかったが、最も気がかりなのが“言葉の壁”だ。確かに一部報道にあるように、「メジャーでも外国人捕手が増えている」というのは事実に違いないが、そのほとんどを占めるラテン系捕手たちが、他のラテン系選手と比べ殊の外流暢な英語を話すということを見過ごすことはできない。

 イバン・ロドリゲス、ホルゲ・ポサダ、ヤディア・モリーナ各選手ら、私が取材してきた捕手たちは、ほぼネイティブ並みの英語を操る。一方でラテン系の投手の中には、バートロ・コロン、オルランド・ヘルナンデスの各投手のように、逆にほとんど英語を話さない選手がいるのだ。つまり現在のメジャーでは、英語とスペイン語を話せるラテン系捕手の方が逆に重宝されているように思う。

 城島選手も、英語のみならず時としてスペイン語も必要になってくるだろう。シリーズごとに行われるバッテリー・ミーティングを含め、野球以上に投手との対話が必要になるのが捕手。試合中は通訳を利用できる範囲も限られてくるハンディもある。これまでの日本人メジャー選手以上に苦労するのではないだろうか。

●右のランディー・ジョンソン登場?

 WBC取材中に発見したのだが、ドミニカ代表で出場していたオリオールズのダニエル・カブレラ投手に、実は個人的に只ならぬ期待を寄せている。

 第2ラウンドのベネズエラ代表戦に先発し、4回を投げ無安打無失点7奪三振と絶頂期のペドロ・マルティネス投手を彷彿させるような圧倒的な投球を披露。ほぼ2m近い身長から繰り出す直球は最高で時速99マイル(約158km)を計測。平均でも常時96〜98マイルを維持。まさに右のランディー・ジョンソンといっていいだろう。

 昨年までメジャー2年間で22勝21敗、防御率4.75と平凡な記録だったが、今季からオリオールズに移籍したレオ・マゾーネ投手コーチの指導を受け、投球フォームを改造。「凄く投げやすくなった」と、本人もかなり気に入っているらしい。WBCでは球数制限があり最初から飛ばしていたが、先発として 100球前後まで同様の投球ができるならば、簡単に打てるような投手ではない。一気にブレイクする可能性十分だ。

●危うし?14連覇

 前の話題に関連しているのだが、これまで1979年以来ブレーブスの投手を指導してきたマゾーネ投手コーチがオリオールズに移籍した。その間マダックス、グラビン、スモルツ各投手に代表される投手王国を築き上げ、コックス監督との二人三脚で、ナ・リーグ東地区13連覇を達成したといっても過言ではないだろう。

 今季マゾーネ氏に代わったロジャー・マクドウェル氏もドジャースなど何チームかを渡り歩き実績あるコーチには違いない。だが一方で、ビッグネームが次々に去り、ここ数年はベテランから若手に切り替えが進む過渡期にあるブレーブス投手陣。マクドウェル氏の役割は決して楽ではない。打撃陣も一時期のような爆発力はなく、ここ数年は厳しい戦いが続いているだけに、果たして今季はどうなるだろうか?

●引退、それとも…

 WBCを最後に、引退を表明したロジャー・クレメンス投手。実はWBC後も、アストロズのキャンプ地に顔を出し続けている。長男コビーくんが今季からアストロズの一員になったこともあり、現在は家族総出でフロリダに落ち着いている。

 先日その情報を聞きつけキャンプ地を訪れたところ、コビーくんが紅白戦に出場している隣の球場で、三男ケーシーくん、四男コディーくんの2人に打撃練習をさせているクレメンス投手を発見した。もちろんその様子は家族たちとの時間を満喫していたし、完全なるリラックス・ムードだった。

 とはいえ今でも自ら野球に囲まれた生活環境に身を置いて、アストロズと強力な友好関係を築いているのも事実だ。以前に取り上げているが、5月1日以降ならクレメンスは再びアストロズと再契約できる。この1ヶ月間で彼に心境の変化が起こるのだろうか……。

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