佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER

不本意な締めくくり。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2008/11/12 00:00

不本意な締めくくり。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「自分のベンチマークはチームメイトのニコですから、彼より前で予選を終えられたのはいいんですが、クルマが決まってないから……ウーン、決勝は難しいと思います」

 最終戦ブラジルの予選を16位で終えた中嶋一貴は、そう言って顔をしかめた。試走時から強いアンダーステアに悩んだウィリアムズ・チームは、予選前に思い切ったセッティング変更をマシンに施したが事態は好転せず、ニコ・ロズベルグも18位。二人揃ってのQ1敗退はシーズン初のことだ。一貴のレギュラー・ドライバー1年目の最終戦は、走る前から多くは期待できそうもなかった。ただし、何かが起こることも十分考えられた。彼の粘りがあれば、そう悲観したものでもないだろう。しかも予報では、ハプニングにつきものの雨である。

 前戦・中国もまたウィリアムズにとって苦しい戦いとなった。ロズベルグは予選Q1で辛うじて15位。Q2に進むことはできたものの、それ以上ポジションを上げられずじまいだったし、一貴は17位に沈んだ。日本のレース後「中国もウチのマシンとは相性がよくないと思います」と予想していたが、その厭な予感はあたってしまったのだ。これまで中嶋一貴が何度も指摘してきたように「中・高速コーナーがある路面がスムースなサーキットで、持ち込まれるタイヤが硬い」レースはウィリアムズが最も苦手とするパターン。中国もその“苦手スパイラル”の条件にピタリ当てはまった。タイヤはミディアムとハードで、ブリヂストンが用意する4種類のうち、硬いほうの2種類のタイヤである。マシンとサーキットの相性の問題は簡単には説明がつかないが、ブリヂストンのエンジニアによれば、ウィリアムズが使い終わったタイヤは非常にキレイな状態という。すなわちウィリアムズは「タイヤにやさしいマシン」ということで、けっして悪いことではないのだが、別の見方をすれば「タイヤ性能を100%活かし切っていない」とも言える。このマシン特性が、今シーズンの不振の最も大きな原因のようだ。

 中国グランプリ決勝の一貴は1回ピットストップ作戦で完走。しかし結果は12位と、ポイント圏内までは遠かった。それでも15位に終わったロズベルグよりも前でフィニッシュし、一貴本人は「ポジティブな結果」と、レース内容には満足。とはいうものの、少なくとも予選でトップ10が狙えるくらいでないと得点は難しいという事実を再認識させられた一戦ではあった。

 ブラジルのスタート直前、突然の降雨。一貴は他のドライバーと同じくウェット・タイヤでスタートした。だが、彼の実質的なレースは1コーナーを回ったところで終わってしまった。ロズベルグがクルサードに追突し、クルサードがスピンしたと思った刹那、一貴にヒット。一貴のマシンは一瞬宙に浮くほどの衝撃を受けたが、なんとか再走はでき、修理のためのピットインも不要。しかしながらマシンは本調子ではなく、車群から大きく遅れたのも致命的で、完走はしたものの17位で今シーズンを終えた。思えば富士といいブラジルといい、スタート直後にクルサードと当っているのは何かの因縁か。そういえば、昨年デビューしたこのレースでもオーバーテイクしたクルサードと接触している。一貴本人は「まあ、近くに居るということだけだと思いますけど」と、苦笑するばかりだが。

 「(レース後)ビデオを見ましたが、どうしようもないですね。クルサードがイン側でスピンするのは見えたんですが……残念は残念。今日は完走したということだけがポジティブな面でしたね」と、レース後の一貴。

 今季18戦を消化した中嶋一貴は9点(6位+7位×2回+8位×2回)でドライバーズ・ランキング15位(ニコ・ロズベルグは17点で13位)。予選最高位は10位だった。ちなみに父・中嶋悟のデビューイヤー(1987年)の得点は7点(11位)だったが、これは現在と得点体系が違い6位までしか与えられなかったためで、現在のシステムで換算すると15点(4位+5位+6位×2回)になる。

 「アッという間に終わったシーズンでしたが、それなりにうまくできたと思います。ベストレースは……ウーン、レースまでなら富士。レースでは中国。全体をまとめるとシンガポールかな。前半はポイントを拾えたし、後半は内容的にいいレースがあったということで来年に繋がると思います」

 中嶋一貴の2008年は終わった。オフは日本でゆっくりした後、12月9日からのヘレス・テストに向かう。2009年シーズンはそこから始まる。

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